養育費の取り決めはしたものの、支払いが滞ったり、あるいはまったく支払ってもらえないといった内容の相談を受けることがあります。厚生労働省の実態調査では、養育が必要な子どもを持つ親の離婚の場合、養育費の取り決めをしているケースは全体の3割にすぎません。また、取り決めた内容がきちんと守られているケースはそのうちの6割程度で、約束が守られないケースの多くが離婚後2年以内で支払いが止まってしまうようです。

 公正証書をきちんと作成していれば、強制執行といった手段を使うこともできますが、実際には口約束程度の取り決めといったことも多く執行することもできません。本来養育費は、子どもの健全な育成のための資金ですから、親の都合で取り決めなかったり、あるいは支払いの約束を守らないのは親の身勝手と受け止められてしまいます。離婚時にきちんとした取り決めをして書面に残すことは、ある意味で子どもへの責任とも考えられます。

 私たちの相談室でも、養育費の書面の作成はよく行ないます。幸いにして、今まで書面を作成したほとんどのケースで、きちんと約束が守られています。その理由の一つは、公正証書を作成する際に、双方が子どもの未来を念頭に、しっかりと話し合っていることではないかと思います。中には、面と向かって話し合いができないケースもありますが、手紙のやり取りなどでお互いの気持ちを理解することで合意点を探すことができました。

 そして、もう一つ大切なことは、養育費を受取る側の意識の問題ではないかと思います。受取る側は、養育費を受け取るという権利があります。そして、支払う側はその義務を負います。しかし、権利と義務は抱き合わせです。簡単な言葉で言えば、養育費を受け取る側にも義務が生じ、支払う側には権利が生じるということになります。
 養育費を受け取る側の義務は、そのお金を有効に使って子どもを健全に育てることであることは明白です。では、支払う側の権利とは何でしょう? 答えはいろいろあると思います。

 生活上では、いろいろな問題が起きて養育費を支払い続けることが困難になる場合もあります。しかし、相手を恨むだけでは前向きな話し合いはできません。また、「無い袖はふれない」と開き直られては、それ以上の請求が難しいのも現状です。そうならないためにも、養育費を受け取る側が、支払ってくれる相手の権利が何であるかをしっかり理解し、そして、その権利を尊重することが、約束が守られていくために必須の要素ではないかと思います。
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