行政書士の仕事の中には、相続に関わるものが多くあります。遺産分割協議書を作成したり、遺言書の作成をお手伝いしたり、その他諸々のご依頼が入ります。莫大な財産であればいざ知らず、相続税の対象にならない程度の比較的わずかな遺産を巡るいろいろな問題のご相談も増えています。あえて言えば、故人が遺言を遺してくれていれば、それほど大きな問題にはならなかったように思えることが親族間の確執につながります。そこに、やはり世代間の価値観の違いを感じる事があります。

 少し前の日本では、家督は長男が継ぐのが当たり前でした。だから、あらためて遺言をしなくても皆がそれを納得するものと思っている方が多く見受けられます。また、親の目から見ると、兄弟はお互いに信頼関係ができていると見えるのかもしれません。
 しかし、時代は変わってきています。人間関係のあり方も同様です。以前のような親戚同士の密接な関わり合いはなくなってきているようです。滅多に会わない兄弟同士が親の葬儀で久しぶりに顔を合わせるといったことも少なくはありません。
 相続の法律の中に、寄与分と言って生前の故人の生活に寄与した出費は相続財産から差し引くという考え方があります。介護などの出費や労務はこれに相当します。また、特別受益と言って、生前に故人から受けた贈与は逆に相続財産に組み入れて、そのうえで分割するという考え方もあります。この辺が、相続の問題をさらに複雑にする要因ともなります。

 ご相談を受ける中で強く感じるのは、相続の問題は単にお金の問題ではないことがほとんどという事です。法律ではどうしてもお金の問題ばかりに目が向いてしまいます。結局はお金の問題と割り切る事ができればまだ良いのですが、誰もが納得せず、かえって確執を大きくしてしまう事例も多くあるようです。では、お金ではなく何が欲しいのか?
 そこに、「わかって欲しい心」があるように思えます。遺言がないと故人の意志を正確に知ることはできません。また故人に、こちらの気持ちを伝える事もできません。遺された親族がそんな気持ちをわかりあおうとすることが問題を解決していく上で大切な事ではないかと思います。
 これから、ますます相続に関わる問題は増加していくようです。人間関係が希薄になり、親族間のつながりも希薄で自分本位になりがちだからかもしれません。遺していく家族の確執を避けるためには遺言を遺す事も一計です。また、負担付死因贈与契約といった考え方も知っておくと良いかもしれません。そして何より、相続は心の問題ということをご理解いただく事が、解決の糸口を見つけやすくすることにつながると思います。
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