10年05月11日
遺言の書き方(12) 遺留分を害する遺言
先日、老人ホームの施設長とお話しをしていて、こんな質問を受けました。
『ある司法書士の先生に、入居者の方が遺言書の作成を依頼したのだが、3人の子どもの内の一人に全財産を与える、という内容だった。他の二人には遺留分という権利があるが、請求されなければ大丈夫だから・・・と言われた。しかし、そんな遺言で大丈夫なのか?』
◎自筆証書遺言の場合、このケースのように遺留分を害する遺言は珍しくありませんが、専門家が関わった場合は、敢えて遺留分減殺請求の余地のある遺言を作ることは少ないのではないでしょうか?「請求されなければ大丈夫・・・」というのは、ちょっと無責任のような気もします。
遺言書って結構難しいんですが、専門家の中には舐めている先生もいらっしゃるようです。
『ある司法書士の先生に、入居者の方が遺言書の作成を依頼したのだが、3人の子どもの内の一人に全財産を与える、という内容だった。他の二人には遺留分という権利があるが、請求されなければ大丈夫だから・・・と言われた。しかし、そんな遺言で大丈夫なのか?』
◎自筆証書遺言の場合、このケースのように遺留分を害する遺言は珍しくありませんが、専門家が関わった場合は、敢えて遺留分減殺請求の余地のある遺言を作ることは少ないのではないでしょうか?「請求されなければ大丈夫・・・」というのは、ちょっと無責任のような気もします。
遺言書って結構難しいんですが、専門家の中には舐めている先生もいらっしゃるようです。
09年07月26日
遺言の書き方(8) 遺留分の事前放棄
遺留分の事前放棄
相続の事前放棄はできません。
しかし、「遺留分」の事前放棄は可能です。
これができると、具体的にはどうなるか?
たとえば、相続人の一人にすべての財産を
相続させる遺言を書いたとしても、他の相続人
が遺留分減殺請求権を行使すると、遺言者の
意思は実現されません。
そこで、このような遺言を書くと同時に、他の
すべての相続人に遺留分の放棄をしてもらう
よう話をまとめ、家庭裁判所に申し立てをして
許可を得ておけば、相続発生時に遺留分減殺
請求をされずに、遺言とおりの相続を実現できる
のです。
前提として、遺言者の意見を他の相続人が受け
入れる状況があることが必要ですが・・・。
相続の事前放棄はできません。
しかし、「遺留分」の事前放棄は可能です。
これができると、具体的にはどうなるか?
たとえば、相続人の一人にすべての財産を
相続させる遺言を書いたとしても、他の相続人
が遺留分減殺請求権を行使すると、遺言者の
意思は実現されません。
そこで、このような遺言を書くと同時に、他の
すべての相続人に遺留分の放棄をしてもらう
よう話をまとめ、家庭裁判所に申し立てをして
許可を得ておけば、相続発生時に遺留分減殺
請求をされずに、遺言とおりの相続を実現できる
のです。
前提として、遺言者の意見を他の相続人が受け
入れる状況があることが必要ですが・・・。
09年04月27日
遺言の書き方(11) 「遺贈する」と「相続させる」③
「相続させる」遺言と特別受益・寄与分との関係
「相続させる」旨の遺言が、遺産分割方法の指定という効果があるとすると、相続発生と同時に指定通りに遺産の所有権が各相続人に移転しますから、指定された遺産については、「遺産分割」の余地がなくなります。
ところが、寄与分の認定や特別受益の算定は、遺産分割手続の中で行われるため、寄与分の配慮や特別受益の持ち戻し免除を遺言にしたい場合に不都合が生じます。つまり、遺産のすべてについて「相続させる」遺言をしてしまうと、寄与分や特別受益による調整ができなくなるのです。
そこで、遺言者がそのような配慮をした遺言書を作成したい場合は、遺産の一部について「相続させる」とし、その他の遺産については「相続分の指定」という表現を用いる必要があります。
(例)相続人:子Xおよび子Y
1.A不動産はXに相続させる。
2.預貯金及び株式その他の財産は、Xが2/3、Yが1/3を取得する。
3.(付言事項)Xは、A不動産において遺言者と永年同居しており、年金の他に生計の途がないので、A不動産はXに与える。また、Xは遺言者のために献身的な介護を永年にわたり続け、自宅でヘルパー等の介護サービスを利用することもなかったため、遺言者の財産の維持に多大な寄与をしたものであるから、上記のような相続分の指定をした。
もっとも、特定財産を「遺贈する」すなわち、特定遺贈にすればその他の遺産は分割の対象になりますから、上記のような配慮は不要となります。
「相続させる」旨の遺言が、遺産分割方法の指定という効果があるとすると、相続発生と同時に指定通りに遺産の所有権が各相続人に移転しますから、指定された遺産については、「遺産分割」の余地がなくなります。
ところが、寄与分の認定や特別受益の算定は、遺産分割手続の中で行われるため、寄与分の配慮や特別受益の持ち戻し免除を遺言にしたい場合に不都合が生じます。つまり、遺産のすべてについて「相続させる」遺言をしてしまうと、寄与分や特別受益による調整ができなくなるのです。
そこで、遺言者がそのような配慮をした遺言書を作成したい場合は、遺産の一部について「相続させる」とし、その他の遺産については「相続分の指定」という表現を用いる必要があります。
(例)相続人:子Xおよび子Y
1.A不動産はXに相続させる。
2.預貯金及び株式その他の財産は、Xが2/3、Yが1/3を取得する。
3.(付言事項)Xは、A不動産において遺言者と永年同居しており、年金の他に生計の途がないので、A不動産はXに与える。また、Xは遺言者のために献身的な介護を永年にわたり続け、自宅でヘルパー等の介護サービスを利用することもなかったため、遺言者の財産の維持に多大な寄与をしたものであるから、上記のような相続分の指定をした。
もっとも、特定財産を「遺贈する」すなわち、特定遺贈にすればその他の遺産は分割の対象になりますから、上記のような配慮は不要となります。
09年03月31日
遺言の書き方(10) 「遺贈する」と「相続させる」②
最高裁判決の考え方によると、「遺贈する」と記載された場合と「相続させる」と記載された場合とでは所有権移転時期は同じ結果となります。
しかし、以下の点については違いがあります。
1 登記手続について
「遺贈する」の場合:受遺者と全相続人 (又は遺言執行者)との共同申請が必要。
「相続させる」の場合:受益者から単独で申請し登記ができる。
2 登記の登録免許税について (平成18年4月1日以降)
「遺贈する」の場合:不動産の評価額の1,000分の20
(ただし、相続人に対する遺贈の場合は不動産の評価額の1,000分の 4)
「相続させる」の場合:不動産の評価額の1,000分の4
3 第三者対抗要件について
<「遺贈する」と記載した場合>
「遺贈する」旨の遺言によって不動産を相続した場合、その所有権の取得を第三者に対抗するためには登記が必要か否かについては従来学説の対立がありました。
しかし最高裁判所は、「遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」とし、対抗要件必要説を採りました。 よって、この場合に所有権の取得を第三者に対抗するためには、登記が必要となります。
<「相続させる」と記載した場合>
「相続させる」旨の遺言によって不動産を相続した場合、その所有権の取得を第三者に対抗するためには登記が必要か否かについて従前は明らかではありませんでした。 しかし、最高裁平成14年6月10日判決は、「『相続させる』趣旨の 遺言による相続分または指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして、法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる。」として対抗要件不要説を採りました。よって、この場合には、相続登記を経なくてもその遺産の取得を第三者に対抗することができます。
☆以上の点から、遺言によって特定の相続人に対して特定の財産を与えようとする場合、「相続させる」との文言を用いた方がメリットが多く、実務上も専らこの表現が使用されています。
09年03月23日
遺言の書き方(9) 「遺贈する」と「相続させる」
1. 「遺贈する」と記載した場合
ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合、「遺贈する」と記載されていれば、これは民法に定める「遺贈」であることが文言自体から明らかです。
したがって、当該財産の所有権は、相続人の遺産分割を経なくても、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転することとなります。
2.「相続させる」と記載した場合
これに対して、ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合に、遺言書に「相続させる」と記載することもあります。
この場合には、文言自体からその趣旨が明らかとならないため、「遺贈説」と「遺産分割方法の指定説」とが対立していました。遺贈説は、(a)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとの解釈を採りました。遺産分割方法の指定説はさらに、(b)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとする立場と、(b')遺言に基づく遺産分割を経なければ当該遺産の所有権が移転しないとする立場とに別れていました。
ただし、学説上の対立にもかかわらず、登記実務上は、「相続させる」との文言の場合にも、遺産分割協議なしの所有権移転登記を受け付けてきていました。そして、最高裁平成3年4月19日判決は、この実務上の取扱いを承認し、「相続させる」との文言は「遺産の分割方法の指定」であると解しつつ、当該財産の所有権は、何らの行為を要せずに、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転すると考える立場を採用し(最判平3・4・19判時1384・24)、実務上もこの扱いが定着しました。
ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合、「遺贈する」と記載されていれば、これは民法に定める「遺贈」であることが文言自体から明らかです。
したがって、当該財産の所有権は、相続人の遺産分割を経なくても、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転することとなります。
2.「相続させる」と記載した場合
これに対して、ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合に、遺言書に「相続させる」と記載することもあります。
この場合には、文言自体からその趣旨が明らかとならないため、「遺贈説」と「遺産分割方法の指定説」とが対立していました。遺贈説は、(a)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとの解釈を採りました。遺産分割方法の指定説はさらに、(b)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとする立場と、(b')遺言に基づく遺産分割を経なければ当該遺産の所有権が移転しないとする立場とに別れていました。
ただし、学説上の対立にもかかわらず、登記実務上は、「相続させる」との文言の場合にも、遺産分割協議なしの所有権移転登記を受け付けてきていました。そして、最高裁平成3年4月19日判決は、この実務上の取扱いを承認し、「相続させる」との文言は「遺産の分割方法の指定」であると解しつつ、当該財産の所有権は、何らの行為を要せずに、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転すると考える立場を採用し(最判平3・4・19判時1384・24)、実務上もこの扱いが定着しました。




