2009年 3月の記事一覧
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最高裁判決の考え方によると、「遺贈する」と記載された場合と「相続させる」と記載された場合とでは所有権移転時期は同じ結果となります。
しかし、以下の点については違いがあります。
1 登記手続について
「遺贈する」の場合:受遺者と全相続人 (又は遺言執行者)との共同申請が必要。
「相続させる」の場合:受益者から単独で申請し登記ができる。
2 登記の登録免許税について (平成18年4月1日以降)
「遺贈する」の場合:不動産の評価額の1,000分の20
(ただし、相続人に対する遺贈の場合は不動産の評価額の1,000分の 4)
「相続させる」の場合:不動産の評価額の1,000分の4
3 第三者対抗要件について
<「遺贈する」と記載した場合>
「遺贈する」旨の遺言によって不動産を相続した場合、その所有権の取得を第三者に対抗するためには登記が必要か否かについては従来学説の対立がありました。
しかし最高裁判所は、「遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」とし、対抗要件必要説を採りました。 よって、この場合に所有権の取得を第三者に対抗するためには、登記が必要となります。
<「相続させる」と記載した場合>
「相続させる」旨の遺言によって不動産を相続した場合、その所有権の取得を第三者に対抗するためには登記が必要か否かについて従前は明らかではありませんでした。 しかし、最高裁平成14年6月10日判決は、「『相続させる』趣旨の 遺言による相続分または指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはない。そして、法定相続分又は指定相続分の相続による不動産の権利の取得については、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる。」として対抗要件不要説を採りました。よって、この場合には、相続登記を経なくてもその遺産の取得を第三者に対抗することができます。
☆以上の点から、遺言によって特定の相続人に対して特定の財産を与えようとする場合、「相続させる」との文言を用いた方がメリットが多く、実務上も専らこの表現が使用されています。
1. 「遺贈する」と記載した場合
ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合、「遺贈する」と記載されていれば、これは民法に定める「遺贈」であることが文言自体から明らかです。
したがって、当該財産の所有権は、相続人の遺産分割を経なくても、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転することとなります。
2.「相続させる」と記載した場合
これに対して、ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合に、遺言書に「相続させる」と記載することもあります。
この場合には、文言自体からその趣旨が明らかとならないため、「遺贈説」と「遺産分割方法の指定説」とが対立していました。遺贈説は、(a)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとの解釈を採りました。遺産分割方法の指定説はさらに、(b)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとする立場と、(b')遺言に基づく遺産分割を経なければ当該遺産の所有権が移転しないとする立場とに別れていました。
ただし、学説上の対立にもかかわらず、登記実務上は、「相続させる」との文言の場合にも、遺産分割協議なしの所有権移転登記を受け付けてきていました。そして、最高裁平成3年4月19日判決は、この実務上の取扱いを承認し、「相続させる」との文言は「遺産の分割方法の指定」であると解しつつ、当該財産の所有権は、何らの行為を要せずに、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転すると考える立場を採用し(最判平3・4・19判時1384・24)、実務上もこの扱いが定着しました。
ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合、「遺贈する」と記載されていれば、これは民法に定める「遺贈」であることが文言自体から明らかです。
したがって、当該財産の所有権は、相続人の遺産分割を経なくても、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転することとなります。
2.「相続させる」と記載した場合
これに対して、ある特定の相続人に対して特定の財産を与える場合に、遺言書に「相続させる」と記載することもあります。
この場合には、文言自体からその趣旨が明らかとならないため、「遺贈説」と「遺産分割方法の指定説」とが対立していました。遺贈説は、(a)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとの解釈を採りました。遺産分割方法の指定説はさらに、(b)遺言者の死亡により直ちに当該遺産の所有権が移転するとする立場と、(b')遺言に基づく遺産分割を経なければ当該遺産の所有権が移転しないとする立場とに別れていました。
ただし、学説上の対立にもかかわらず、登記実務上は、「相続させる」との文言の場合にも、遺産分割協議なしの所有権移転登記を受け付けてきていました。そして、最高裁平成3年4月19日判決は、この実務上の取扱いを承認し、「相続させる」との文言は「遺産の分割方法の指定」であると解しつつ、当該財産の所有権は、何らの行為を要せずに、遺言者の死亡によって直ちに受遺者に移転すると考える立場を採用し(最判平3・4・19判時1384・24)、実務上もこの扱いが定着しました。
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