ある県のレポートを紹介します。

 建設産業を取り巻く現状分析や各種のアンケート調査結果等から、現在建設業が抱える課題には、一般に以下のような点が指摘されています。これらへの的確な対応ができないとした場合、淘汰、再編は避けられないとされており、企業として速やかな対策を検討していくことが求められています。
 また、県においても市場を通じた淘汰を促進し、建設業の過剰供給構造の是正を図ることが重要と考えており、そのため経営基盤の強化と効率化を図ろうとする企業の努力を促すことで、足腰の強い建設業の育成を図り、建設産業全体の健全な発展とその活性化を進めていくことが喫緊の課題となっております。

①建設業者の供給過剰感が顕在化
 建設投資が大幅に減少し、近い将来、建設投資が大きく回復することが期待できない状況の中で、建設業者数は、建設投資額がピークの平成5年度に比べ年々増加し、ここ数年は高水準で推移しており、相対的に建設業者が供給過剰の状況といえます。

②収益率の低下など経営環境の悪化
 建設投資の大幅な減少に伴い受注高が減少し、また、受注競争の激化から収益率も低下する傾向にあるなど、経営環境は悪化しており、今後は、完工高が減少しても確実に収益を上げられる経営体質への改善が急務となっています。

③競争に勝ち抜く技術力の維持・向上
 厳しい経営環境の中で、今後とも低コストで良質な社会資本を整備・提供していくことが求められており、各企業は技術力のより一層の維持園向上に努め、他社との差別化を図っていくことが必要となっています。

④合併聞協業化や新分野進出
 建設投資と建設業者数との受給バランスの不均衡を背景として、今後、現在の建設業者数を維持することは困難と思われることから、経営上の弱点を補うような企業連携、技術力の向上や技術移転などを図るための企業合併や協業化、さらには本業の建設業以外の新たな事業分野進出の可能性についても検討していくことが課題となっています。

⑤ IT化への対応
 情報化社会が急速に進展する中で、ITシステムの活用等による情報の一元管理、企業間取引の円滑化、コスト縮減などの経営システムの合理化対策に取り組むことが求められております。また、公共工事の円滑で効率的な執行を図るために導入される?? CALS/EC(公共事業支援統合情報システム)にも、迅速かつ適切に対応していく必要があります。

⑥労働条件の改善と労働災害の防止
 建設業者は、経営規模の零細な企業が多く、日給制や日給月給制など不安定な雇用関係に置かれている者が多いことなどから、労働条件が不明確になる傾向にあります。また、建設現場での作業は危険性が高く、一度事故が発生したら相当の人的聞物的被害が予想されることなどから、労働災害の防止をはじめとする労働環境の改善に努め、安全で安心して働ける職場にしていく必要があります。

⑦若年労働者の確保箇育成
 少子周高齢化の進展や若年労働者の比率の低下により、将来の技術者の減少や技能の承継に影響を及ぼし、ひいては建設産業の健全な発展に支障をきたすおそれがあることから、若年労働者の確保と、その育成に努めることが重要です。

⑧県内建設業者の受注機会の確保
 建設投資が大幅に減少している中にあって、公共投資が民間投資を上回るなど公共事業依存度が、極めて高い本県にとっては、公共事業における地元中小建設業者の受注機会の確保を一層図っていくことが求められる。

⑨技術と経営に優れた企業が伸びていく環境づくり
 経営体質の改善や技術力の維持回向上により競争力を確保した企業が成長し、発展していくためには、企業の自助努力によることは当然ですが、行政においても、技術と経営に優れた企業が正当に評価される環境整備を推進していくことが求められています。