2012年 5月の記事一覧
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札幌市豊平区の 行政書士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 3 短期前払費用の2回目です。
中小会計要領には短期前払費用に関する定めはありませんが、中小会計指針および法人税法基本通達には短期前払費用に関する定めがあります。中小会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、法人税法基本通達2-2-14の短期前払費用に関する文章をもう一度掲げておきます。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。 (昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
前回は2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金とした納税者が負けた事例でした。
以下のサイトを参照。
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
その判決では、次の2点を根拠として課税上弊害が生じるため、その前払費用は重要性が乏しいとはいえず、本件通達後段は適用されないとされていました。
① 本件各費用の額は財務内容に占める割合やその影響が大きいものと認められる。
② 次の2点から、利益を圧縮するための租税回避が目的と認められる。
ⅰ 月払から年払への支払方法の変更に合理的な理由がなく、また、未払で残っている賃借料等をそのままにしながら、今後の分を手形で支払うのは不自然である。
ⅱ 期末に多額の利益が見込まれたこと、また、納税者が様々な方法で同期の利益圧縮を図っていたことは、他の証拠からも明らかであること。
今回は国税不服審判所の裁決において納税者が一部勝った事例を採り上げ、短期前払費用についての理解を深めることにしましょう。
採り上げる裁決は、納税者である法人が2400万円の費用を短期前払費用の一括損金として申告したところ、課税庁がその損金算入を認めず更正したため、納税者が国税不服審判所長に対し審査請求した事件です。
続きは http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=163
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
http://www.ksc-kaikei.com/
See you next!
≪えっ、そんなに高いの! 『加算税や延滞税』の割合は・・・≫
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=58
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◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
≪税務調査に当たる確率はどのくらい? ≫
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=110
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Tel 011-812-1672 http://www.ksc-kaikei.com/
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お気軽に御連絡下さい。
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中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 3 短期前払費用の2回目です。
中小会計要領には短期前払費用に関する定めはありませんが、中小会計指針および法人税法基本通達には短期前払費用に関する定めがあります。中小会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、法人税法基本通達2-2-14の短期前払費用に関する文章をもう一度掲げておきます。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。 (昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
前回は2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金とした納税者が負けた事例でした。
以下のサイトを参照。
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その判決では、次の2点を根拠として課税上弊害が生じるため、その前払費用は重要性が乏しいとはいえず、本件通達後段は適用されないとされていました。
① 本件各費用の額は財務内容に占める割合やその影響が大きいものと認められる。
② 次の2点から、利益を圧縮するための租税回避が目的と認められる。
ⅰ 月払から年払への支払方法の変更に合理的な理由がなく、また、未払で残っている賃借料等をそのままにしながら、今後の分を手形で支払うのは不自然である。
ⅱ 期末に多額の利益が見込まれたこと、また、納税者が様々な方法で同期の利益圧縮を図っていたことは、他の証拠からも明らかであること。
今回は国税不服審判所の裁決において納税者が一部勝った事例を採り上げ、短期前払費用についての理解を深めることにしましょう。
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中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 2 短期前払費用 についてです。
中小会計要領には短期前払費用に関する定めはありませんが、中小会計指針および法人税法基本通達には短期前払費用に関する定めがありますので、中小会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、中小会計指針では次のようになっています(注1)。
「前払費用のうち当期末においてまだ提供を受けていない役務に対応する前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対応する金額については、継続適用を条件に費用処理することができる。」
中小会計指針のこの規定は、法人税法基本通達の短期前払費用に関する次の文章を取り入れたものでした(注2)。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
以上の2つの文章には、短期前払費用に関して、企業会計原則の重要性の原則との関連性を伺わせる文言は入っていません。
一括費用計上または一括損金算入が認められるためには、次の2要件を満たす必要があります。
① 1年以内に提供を受ける継続的役務に係るものを支払うこと。
② 一括費用計上または一括損金算入を継続適用すること。
そのため、法人が既に契約していた継続的役務に係る支払を月払から年払に変更して前払したり、新たに契約した継続的役務に係る金額を前払し、支払日の属する事業年度の費用として計上し、その後も継続適用するならば、その全額が「損金として認められる。」と解釈することも可能となります。
この解釈が税務上認められるならば、黒字法人の決算期直前の節税策として、金額の多寡にかかわらず短期前払費用を一括費用計上することにより、その金額は税務上の損金として認められることになります。
さて、このように1年以内の短期前払費用ならば、すべて一括損金と認められるのでしょうか。
この問題を検討する際のポイントは、次の2点です。
① 短期前払費用の規定は企業会計原則の重要性の原則を根拠とするものなのか。
② 一括損金算入の継続適用とはどのようなものなのか。
今回はこの問題について、判例に基づいて見てみましょう。
採り上げる判決は、納税者である法人が2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金として申告したところ、課税庁がその損金算入を認めず更正したため、納税者が提訴した事件です。
原告である3月決算の納税者は、平成9年3月期において、本件各費用(合計2億1千万円強)について、約束手形を振り出して支払い、これは法人税法基本通達2-2-14後段に定める短期前払費用に該当するものとして、全額を平成9年3月期の損金の額に算入しました。本件各費用の内容は以下の通りです。
続きは http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
http://www.ksc-kaikei.com/
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◎ 今年の桜は・・・?
≪お気に入りの 「かすみ桜」 ≫
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=117
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◎ 通勤手当の非課税はいくらまで?
自動車、自転車を使って通勤する場合の通勤手当や徒歩の場合の通勤手当。
交通機関を利用する場合と比べ非課税限度額が異なります。いくらか御存知ですか?
Q&A形式で、非課税となる通勤手当について詳しくお知らせしましょう。
これで、あなたも通勤手当のエキスパートに!!
≪交通費や通勤手当、非課税はいくらまで?≫ 基礎編
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=85
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お気軽に御連絡下さい。
Tel 011-812-1672 http://www.ksc-kaikei.com/
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 2 短期前払費用 についてです。
中小会計要領には短期前払費用に関する定めはありませんが、中小会計指針および法人税法基本通達には短期前払費用に関する定めがありますので、中小会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、中小会計指針では次のようになっています(注1)。
「前払費用のうち当期末においてまだ提供を受けていない役務に対応する前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対応する金額については、継続適用を条件に費用処理することができる。」
中小会計指針のこの規定は、法人税法基本通達の短期前払費用に関する次の文章を取り入れたものでした(注2)。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
以上の2つの文章には、短期前払費用に関して、企業会計原則の重要性の原則との関連性を伺わせる文言は入っていません。
一括費用計上または一括損金算入が認められるためには、次の2要件を満たす必要があります。
① 1年以内に提供を受ける継続的役務に係るものを支払うこと。
② 一括費用計上または一括損金算入を継続適用すること。
そのため、法人が既に契約していた継続的役務に係る支払を月払から年払に変更して前払したり、新たに契約した継続的役務に係る金額を前払し、支払日の属する事業年度の費用として計上し、その後も継続適用するならば、その全額が「損金として認められる。」と解釈することも可能となります。
この解釈が税務上認められるならば、黒字法人の決算期直前の節税策として、金額の多寡にかかわらず短期前払費用を一括費用計上することにより、その金額は税務上の損金として認められることになります。
さて、このように1年以内の短期前払費用ならば、すべて一括損金と認められるのでしょうか。
この問題を検討する際のポイントは、次の2点です。
① 短期前払費用の規定は企業会計原則の重要性の原則を根拠とするものなのか。
② 一括損金算入の継続適用とはどのようなものなのか。
今回はこの問題について、判例に基づいて見てみましょう。
採り上げる判決は、納税者である法人が2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金として申告したところ、課税庁がその損金算入を認めず更正したため、納税者が提訴した事件です。
原告である3月決算の納税者は、平成9年3月期において、本件各費用(合計2億1千万円強)について、約束手形を振り出して支払い、これは法人税法基本通達2-2-14後段に定める短期前払費用に該当するものとして、全額を平成9年3月期の損金の額に算入しました。本件各費用の内容は以下の通りです。
続きは http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
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◎ 通勤手当の非課税はいくらまで?
自動車、自転車を使って通勤する場合の通勤手当や徒歩の場合の通勤手当。
交通機関を利用する場合と比べ非課税限度額が異なります。いくらか御存知ですか?
Q&A形式で、非課税となる通勤手当について詳しくお知らせしましょう。
これで、あなたも通勤手当のエキスパートに!!
≪交通費や通勤手当、非課税はいくらまで?≫ 基礎編
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=85
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Tel 011-812-1672 http://www.ksc-kaikei.com/
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中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 1 です。
(1)前払費用及び前受収益は、当期の損益計算に含めない。
(2)未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に反映する。
【解説】
経過勘定は、サービスの提供の期間とそれに対する代金の授受の時点が異なる場合に、その差異を処理する勘定科目です。損益計算書に計上される費用と収益は、現金の受払額ではなく、その発生した期間に正しく割当てる必要があるからです。
経過勘定には、「前払費用」、「前受収益」、「未払費用」及び「未収収益」があります。その内容は表1のとおりです。
「前払費用」と「前受収益」は、翌期以降においてサービスの提供を受けた、もしくは提供した時点で費用又は収益となるため、(1)にあるように、当期の損益計算には含めないことになります。
「未払費用」と「未収収益」は、当期において既にサービスの提供を受けている、もしくは提供しているので、(2)にあるように、当期の損益計算に反映することになります。
なお、金額的に重要性の乏しいものについては、受け取った又は支払った期の収益又は費用として処理することも認められます。
<表1>
(内容と具体例)
前払費用・・・・決算期末においていまだ提供を受けていないサービスに対して支払った対価。
前払いの支払家賃や支払保険料、支払利息等
前受収益・・・・決算期末においていまだ提供していないサービスに対して受け取った対価。
前受けの家賃収入や受取利息等
未払費用・・・・既に提供を受けたサービスに対して、決算期末においていまだその対価を支払っていないもの。
後払いの支払家賃や支払利息、従業員給料等
未収収益・・・・既に提供したサービスに対して、決算期末においていまだその対価を受け取っていないもの。
後払いの家賃収入や受取利息等
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、経過勘定の意義や範囲が<表1>において内容と具体例という形で定められていますが、企業会計原則、中小会計指針や法人税法では、対象となる「サービス」は一定の契約に従い、継続して提供を受けた役務または提供した役務とされているのに対して、中小会計要領では単に「サービス」とされているため、一見、中小会計要領の方が広範囲のサービスを対象としているように見えます。しかし、我が国においては経過勘定の定義が既に定着していると考えられますので、その範囲に実質的な違いはないと考えても良いでしょう。中小会計要領が「一定の契約に従い、継続して」という文言をなに故に省いたのか、解せません。
もともと経過勘定は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けた場合、または提供した場合において、適正な損益計算を実現するための一時的な勘定であり、会計処理の大原則である収益の実現主義、費用の発生主義、収益費用対応の原則に基づき、収支の時期とは関係なく、役務の効果の期間にわたり、収益と費用を期間配分するためのものです。
そのため、中小会計要領を初め、企業会計原則、中小会計指針や法人税法においても経過勘定の計上は強制されています。ただ、例外として、「重要性の原則」が適用される場合が想定されており、例えば、企業会計原則注解 2.1 「注1 重要性の原則の適用について」では次のように定められています。
「企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。」として、その適用例の一つとして、「(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。」とされています。
このため、中小会計要領でも、「なお、金額的に重要性の乏しいものについては、受け取った又は支払った期の収益又は費用として処理することも認められます。」
とされているのです。
さて、経過勘定の中で、会計実務上問題となるのは前払費用、特に短期前払費用の一括費用計上についてです。これは短期前払費用が決算期直前の利益圧縮目的で使用される場合が多いためです。
中小企業要領と企業会計原則では、残念ながら、この点についてひとことも触れていません。一方、中小会計指針ではこれについて次のように定めています(注1)。
「前払費用のうち当期末においてまだ提供を受けていない役務に対応する前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対応する金額については、継続適用を条件に費用処理することができる。」
中小会計指針のこの規定は、法人税法基本通達の短期前払費用に関する次の文章を取り入れたものです(注2)。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
以上のように中小会計指針および法人税法基本通達の短期前払費用には、企業会計原則の重要性の原則との関連性を伺わせる文言は入っていません。それでは、基本通達にあるように、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入」したならば、金額の多寡に関係なく、その全額が「損金として認められる。」のでしょうか?
今回はここまで。
次回は、経過勘定のうち、短期前払費用 についてです。判例を参考にしながら解説します。
≪中小会計要領の主な内容 その6 経過勘定 2、短期前払費用≫
http://www.ksc-kaikei.com/news/
(注1)中小指針 31.経過勘定等に係る会計処理(2)
(注2)法人税法基本通達2-2-14
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◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
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中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 1 です。
(1)前払費用及び前受収益は、当期の損益計算に含めない。
(2)未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に反映する。
【解説】
経過勘定は、サービスの提供の期間とそれに対する代金の授受の時点が異なる場合に、その差異を処理する勘定科目です。損益計算書に計上される費用と収益は、現金の受払額ではなく、その発生した期間に正しく割当てる必要があるからです。
経過勘定には、「前払費用」、「前受収益」、「未払費用」及び「未収収益」があります。その内容は表1のとおりです。
「前払費用」と「前受収益」は、翌期以降においてサービスの提供を受けた、もしくは提供した時点で費用又は収益となるため、(1)にあるように、当期の損益計算には含めないことになります。
「未払費用」と「未収収益」は、当期において既にサービスの提供を受けている、もしくは提供しているので、(2)にあるように、当期の損益計算に反映することになります。
なお、金額的に重要性の乏しいものについては、受け取った又は支払った期の収益又は費用として処理することも認められます。
<表1>
(内容と具体例)
前払費用・・・・決算期末においていまだ提供を受けていないサービスに対して支払った対価。
前払いの支払家賃や支払保険料、支払利息等
前受収益・・・・決算期末においていまだ提供していないサービスに対して受け取った対価。
前受けの家賃収入や受取利息等
未払費用・・・・既に提供を受けたサービスに対して、決算期末においていまだその対価を支払っていないもの。
後払いの支払家賃や支払利息、従業員給料等
未収収益・・・・既に提供したサービスに対して、決算期末においていまだその対価を受け取っていないもの。
後払いの家賃収入や受取利息等
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、経過勘定の意義や範囲が<表1>において内容と具体例という形で定められていますが、企業会計原則、中小会計指針や法人税法では、対象となる「サービス」は一定の契約に従い、継続して提供を受けた役務または提供した役務とされているのに対して、中小会計要領では単に「サービス」とされているため、一見、中小会計要領の方が広範囲のサービスを対象としているように見えます。しかし、我が国においては経過勘定の定義が既に定着していると考えられますので、その範囲に実質的な違いはないと考えても良いでしょう。中小会計要領が「一定の契約に従い、継続して」という文言をなに故に省いたのか、解せません。
もともと経過勘定は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けた場合、または提供した場合において、適正な損益計算を実現するための一時的な勘定であり、会計処理の大原則である収益の実現主義、費用の発生主義、収益費用対応の原則に基づき、収支の時期とは関係なく、役務の効果の期間にわたり、収益と費用を期間配分するためのものです。
そのため、中小会計要領を初め、企業会計原則、中小会計指針や法人税法においても経過勘定の計上は強制されています。ただ、例外として、「重要性の原則」が適用される場合が想定されており、例えば、企業会計原則注解 2.1 「注1 重要性の原則の適用について」では次のように定められています。
「企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。」として、その適用例の一つとして、「(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。」とされています。
このため、中小会計要領でも、「なお、金額的に重要性の乏しいものについては、受け取った又は支払った期の収益又は費用として処理することも認められます。」
とされているのです。
さて、経過勘定の中で、会計実務上問題となるのは前払費用、特に短期前払費用の一括費用計上についてです。これは短期前払費用が決算期直前の利益圧縮目的で使用される場合が多いためです。
中小企業要領と企業会計原則では、残念ながら、この点についてひとことも触れていません。一方、中小会計指針ではこれについて次のように定めています(注1)。
「前払費用のうち当期末においてまだ提供を受けていない役務に対応する前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対応する金額については、継続適用を条件に費用処理することができる。」
中小会計指針のこの規定は、法人税法基本通達の短期前払費用に関する次の文章を取り入れたものです(注2)。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
以上のように中小会計指針および法人税法基本通達の短期前払費用には、企業会計原則の重要性の原則との関連性を伺わせる文言は入っていません。それでは、基本通達にあるように、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入」したならば、金額の多寡に関係なく、その全額が「損金として認められる。」のでしょうか?
今回はここまで。
次回は、経過勘定のうち、短期前払費用 についてです。判例を参考にしながら解説します。
≪中小会計要領の主な内容 その6 経過勘定 2、短期前払費用≫
http://www.ksc-kaikei.com/news/
(注1)中小指針 31.経過勘定等に係る会計処理(2)
(注2)法人税法基本通達2-2-14
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札幌市豊平区の 行政書士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 棚卸資産 です。
(1)棚卸資産は、原則として、取得原価で計上する。
(2)棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法による。
(3)棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等による。
(4)時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
【解説】
商品、製品、半製品、仕掛品、原材料等の棚卸資産は、購入金額に付随費用を加えた購入時の金額(取得価額)に基づき、また、製造業の場合は、製品製造のために使用した材料費、労務費及び製造経費を積算し、取得原価を計算します。また、(3)にあるように、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等により期末の金額(取得原価)を計算します。
(1)にあるように、棚卸資産は、原則として、取得原価で計上します。(2)では、棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法によるとされていますが、原価法とは、取得原価により期末棚卸資産を評価する方法で、低価法とは、期末における時価が取得原価よりも下落した場合に、時価によって評価する方法です。
原価法により評価した場合であっても、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。ここで、(4)にあるように、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが必要となります。
棚卸資産の時価は、商品、製品等については、個々の商品等ごとの売価か最近の仕入金額により把握することが考えられます。
時価を把握することが難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、棚卸資産が著しく陳腐化したときや、災害により著しく損傷したとき、あるいは、賞味期限切れや雨ざらし等でほとんど価値がないと判断できるものについては、評価損の計上が必要と考えられます。
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、棚卸資産の意義や範囲についての記載はないので、これらについては企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用することになります。例えば、法人税法では、棚卸資産のの意義と範囲を次のように定めており(注1)、中小会計指針等でもほぼ同様の定めとなっています。
棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料その他の資産(有価証券および短期売買商品を除く)で棚卸しをすべきものとされており、その範囲は次の通りです。
① 商品または製品(副産物および作業くずを含む)
② 半製品
③ 仕掛品(半成工事を含む)
④ 主要原材料
⑤ 補助原材料
⑥ 消耗品で貯蔵中のもの
⑦ 上記の資産に準ずるもの
棚卸資産の取得価額については、中小会計要領の解説で、購入と自己製造の場合が出ていますが、贈与、交換、代物弁済、合併、現物出資等の「その他の場合」については記載されていません。法人税法ではこれらの場合の取得価額は、その取得の時におけるその資産の取得のために通常要する価額に、消費または販売の用に供するために直接要した費用の額を加算した金額とされ(注2)、これも中小会計指針とほぼ同様の定めとなっています。
棚卸資産の評価基準については、中小会計要領や法人税法では法人が原価法又は低価法を選択できるようになっていますが、中小会計指針や企業会計基準では低価法が強制適用され、期末時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって期末評価額とします。
棚卸資産の評価方法については、中小会計要領、中小会計指針や法人税法では個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等が記載されていますが、企業会計基準では最終仕入原価法は認められていません。その理由は、最終仕入原価法が厳密な意味での原価法と言えないためですが、それにもかかわらず、中小会計要領等で最終仕入原価法が認められているのは中小法人の事務負担の軽減に配慮等したためです。
時価が取得原価よりも著しく下落したときについては、中小会計要領、中小会計指針では、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが強制されますが、法人税法では、任意規定とされており、次の場合に評価損を損金経理したときだけ評価損の計上が認められます(注3)。
① 災害により著しく損傷したこと。
② 著しく陳腐化したこと。
③ ①または②に準ずる特別の事実(破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったこと(注4)など)
次回は、経過勘定、特に短期前払費用 についてです。
≪中小会計要領の主な内容 その5 経過勘定 1≫
http://www.ksc-kaikei.com/news
(注1)法2⑳、法例10
(注2)法令32Ⅰ③
(注3)法令68Ⅰ①
(注4)法基通9-1―6
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
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※ 日本税理士会連合会では、中小企業の計算書類について、「中小企業の会計に関する基本要領」の適用状況を確認するための書類として、「中小企業の会計に関する基本要領の適用に関するチェックリスト」を作成しました。
http://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/pdf/youryouchecklist120327.pdf
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◎ 通勤手当の非課税はいくらまで?
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≪交通費や通勤手当、非課税はいくらまで?≫ 基礎編
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今回は、 棚卸資産 です。
(1)棚卸資産は、原則として、取得原価で計上する。
(2)棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法による。
(3)棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等による。
(4)時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
【解説】
商品、製品、半製品、仕掛品、原材料等の棚卸資産は、購入金額に付随費用を加えた購入時の金額(取得価額)に基づき、また、製造業の場合は、製品製造のために使用した材料費、労務費及び製造経費を積算し、取得原価を計算します。また、(3)にあるように、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等により期末の金額(取得原価)を計算します。
(1)にあるように、棚卸資産は、原則として、取得原価で計上します。(2)では、棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法によるとされていますが、原価法とは、取得原価により期末棚卸資産を評価する方法で、低価法とは、期末における時価が取得原価よりも下落した場合に、時価によって評価する方法です。
原価法により評価した場合であっても、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。ここで、(4)にあるように、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが必要となります。
棚卸資産の時価は、商品、製品等については、個々の商品等ごとの売価か最近の仕入金額により把握することが考えられます。
時価を把握することが難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、棚卸資産が著しく陳腐化したときや、災害により著しく損傷したとき、あるいは、賞味期限切れや雨ざらし等でほとんど価値がないと判断できるものについては、評価損の計上が必要と考えられます。
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、棚卸資産の意義や範囲についての記載はないので、これらについては企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用することになります。例えば、法人税法では、棚卸資産のの意義と範囲を次のように定めており(注1)、中小会計指針等でもほぼ同様の定めとなっています。
棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料その他の資産(有価証券および短期売買商品を除く)で棚卸しをすべきものとされており、その範囲は次の通りです。
① 商品または製品(副産物および作業くずを含む)
② 半製品
③ 仕掛品(半成工事を含む)
④ 主要原材料
⑤ 補助原材料
⑥ 消耗品で貯蔵中のもの
⑦ 上記の資産に準ずるもの
棚卸資産の取得価額については、中小会計要領の解説で、購入と自己製造の場合が出ていますが、贈与、交換、代物弁済、合併、現物出資等の「その他の場合」については記載されていません。法人税法ではこれらの場合の取得価額は、その取得の時におけるその資産の取得のために通常要する価額に、消費または販売の用に供するために直接要した費用の額を加算した金額とされ(注2)、これも中小会計指針とほぼ同様の定めとなっています。
棚卸資産の評価基準については、中小会計要領や法人税法では法人が原価法又は低価法を選択できるようになっていますが、中小会計指針や企業会計基準では低価法が強制適用され、期末時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって期末評価額とします。
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