その後も各ターミナルのカラオケ店の盛況は、止まるところを知らないようである。私もカラオケが好きで、ときたま仲間達とカラオケ店へ行ってガナると、鬱憤が晴れてスキッとする。だが頭が固い私などは、カラオケ店の利用方法は、そうした集団での競演会ぐらいしかないと、ついこの間まで思い込んでいた。
 ところが、意外な利用方法があることを、最近、友人から教えてもらう機会を得た。
①一つは会議室として使う方法である。ある友人がついこの前、地方から呼ばれて講演に行ってきた。ところが直前に決まってすぐ呼ばれたので、公設の会場がなかなか取れない。15人ほどの講演会だが、困った主催者が確保したのが、カラオケルームだったというわけだ。カラオケルームだからといって、何もカラオケを歌わなくてはならないという規則はない。飲み物さえ取れば、店と他の部屋に迷惑を掛けなければ、何をやってもよい理屈である。幸い防音機能は完璧である。2時間たてば、店の方から知らせてくれるという便宜の提供もある。こうしてその講師は任務を全うして帰京できたということである。
 その講師がカラオケルームの会議室活用について、いたく気に入った理由がもう一つあった。いま都内の「談話室」と称する会議室用の貸席料金が異常に高くなって、2時間借りただけで、飲み物付きで1人4千円以上も取られてしまうのだ。昼間2時間の会議をやっただけで4千円強!1人2千円台、3千円台の会議室はすぐ埋まってしまって、なかなか予約が取れないという。そんな理由もあって、これはカラオケルームを使った方がすぐ取れるしリーゾナブルだと、その友人は推奨しだしたのである。
②もう一つの利用方法は、ひとりカラオケである。これは何も一人で歌って「うーん。俺は旨いんだなぁ」と自己満足していろということではない。本格的な声楽の練習によいということらしいのだ。私の大学の友人で、定年になってから時間を無駄に過ごすのはもったいないということで、本格的な声楽の練習を始めた人がいる。今ではソロは無理としても、合唱つきの演奏会で合唱団に加われるだけの実力派の彼が言うのだから、間違いないのだろう。ひとりカラオケだと、自分で音程、音域、発声、声量、間の取り方などを自在に決められるし、曲も演歌やテンポの激しい曲ばかりでなく、クラシックの歌曲、カンツォーネ、シャンソン、昔の小学唱歌など、何でも入っている。それこそ防音装置は完璧なので、他人の上手下手の評価など気にせずに、気ままに練習できるというのである。
 してみると、物まねタレントや声優を志望する人が、口パクの練習をするのにもよいのかもしれない。他にもカラオケルームの効用はもっとあるのかもしれないのだ。気づいた方は是非ご紹介下さい。