さる12月16日に実施された総選挙の結果は、戦後政治史に残るショッキングな事件だった。このように冷厳な形で、国民の総意が示されたのである。民主党を支持するか支持しないかに関わらず、この結果は厳粛に受け止めなければいけない。同時に、みなそれぞれ、自分なりの一定の解釈はしておいた方がいいのかも知れない。
 ただこの事件をどう見るかについては、世上様ざまな見解があって、大変にかまびすしい。いわく「野田首相が解散の時期を見誤ったのだ」「実際の票数の差よりも議席の差が大きく出る、小選挙区制の弊害だ」「少数政党が多数林立して競合したから、自民党を有利にした。野党共闘が必要だった」など。だが政治評論家風に言えば、どの意見も寸足らずで、隔靴掻痒の感を免れない。
 またこの後民主にいわゆる「揺り戻し」があるのかどうかについても、議論は様ざまに分かれる。ふつう、ある選挙である政党に勝たせすぎたなという結果が出ると、次の選挙では行き過ぎた分その政党の票は減らして、負けすぎた政党に付け替えるといった現象が起きる。たとえば2005年の郵政選挙で大敗した民主党が、次の2009年8月の選挙で勝って政権に就く。あるいはその選挙で大敗した自民党が今回の選挙では大勝ちするといった具合である。歴史上ではこういった現象はかなり多く見られる。これらは国民の逞しい生活上の知恵というものなのだろうか。だが、今回の民主党はどうか。
 私自身、余り明解に答えが出せなくて堂々巡りをしているさなかに、ある瞠目すべき見解に出くわした。それは2月9日付の夕刊紙「ニッカン現代」に載ったジャーナリスト高野孟(はじめ)氏の論評である。そこには「政権壊滅の根本は『保守対リベラル』という対立軸を、民主党が自ら掘り崩してしまったことにある」とある。続いて「『リベラル』の軸を自ら放棄した民主党には再建の目などない」とバッサリ切っている。
 そもそも2009年の政権交代が、「保守対リベラル」が対立する、そのリベラルに国民が期待した結果なのだから、それを自ら投げ捨てた民主党に、国民の支持が戻るわけがないという論法である。さて結果はどう出るだろうか。私自身評論家風でいささか気が引けるのだが。
なお高野孟氏はジャーナリスト。「インサイダー」主宰、田原総一朗のテレビ朝日「サンデープロジェクト」のコメンテーターなど。総評2代目事務局長・高野実氏の二男。