後見類型の対象となる方は「精神上の障害により」「事理を弁識する能力を欠く常況にある」方となります。この「常況」は「状況」ではありません。つまり,能力を欠く状態にあるだけでなく,常にそのような状態である必要があると言うわけです。

あまり気持ちの良い響きではありませんが,法律ではこのように定められています。具体的にどのような状態をいうのかは定義されておりませんが,いわゆる植物状態にある場合,その他に恒常的に判断ができない状態にある場合や,時折,判断能力が回復する場合でも,通常は判断できない状態にある場合も含まれるとしています。

さらに具体的な事例では,寝たきりでほとんど意思表示がない状態で会ったり,通帳,銀行印などの大事なものをたびたび紛失したり,自分の住所,家族の名前などのきわめて身近なことが思い出せなくなったりなどが大まかな基準とされています。

ただし,最終的には医師の診断書,鑑定によって家庭裁判所が認定していくことになります。

後見の申立てにおいて,家庭裁判所は「申立ての動機や目的」「本人の健康・生活の状況」「財産状況」「親族(相続人)の関係」などを重視していきます。

後見の審判が決定し,被後見人となるとほとんどの財産に関する法律行為ができなくなります。本人が勝手に行った法律行為は成年後見人,または本人によって取り消すことができます。

ただし,本人のすべての経済活動を規制しては自己決定権の侵害になってしまいますので,身近な日用品の購入や日常的な行為(孫にお小遣いをあげる,好きな食べ物などを買う)などは被後見人がひとりで行うことができます。

その他,被後見人となると,前に述べたように一定の地位・資格や権利を喪失することになります。