4.遺留分の特例

民法第1028条は、法定相続分の1/2を遺留分、

すなわち法定相続人の最低限の取り分、として保障し

ていますが、従来、この遺留分規定もまた、事業承継

の阻害要因となっていました。後継者以外の相続人が、

遺留分減殺請求をしてきた場合、後継者は請求額相当

額の現金を有していなければ、事業用資産を売却して

でも請求に応じなければならないからです。

遺留分制度にも、それなりに合理性はあるのですが

(遺族の生活保障など)、事業用財産の集中が不可欠

な事業承継においては、事業用資産の散逸という事態

を招く遺留分減殺請求を制限する必要がありました。

従来も「遺留分の事前放棄」などによって対応できた

ケースもありましたが、家族関係が複雑な場合などに

は十分に機能せず、事業承継における不安定要素とな

っていました。

経営承継円滑化法は、この不安定要素を解消するため

一定の条件のもとに、自社株式および他の事業用資産

を遺留分算定の基礎となる財産から除外することを認

めました。推定相続人全員の合意や経済産業大臣の確

認、さらには家庭裁判所の許可など、この制度のハー

ドルもそれなりに高いのですが、贈与株式の評価額を

予め固定できるなど、うまく活用できれば大きなメリ

ットが見込めます。