12月14日に投開票された総選挙の結果には、それなりに納得させられた。
 といっても、「自公大勝」を歓迎するというわけでもない。果たしてそれほど「自公が大勝」したのだろうか。現実は自民は3人減だった。公明4プラスと合わせてもプラス1である。突然の解散と「アベノミクス」による必死の株価の吊り上げにも拘らず、3減とは、解散によって予期した成果は上げられなかったといってもよいのではないか。少なくともマスメディアの宣伝とは裏腹に「やや後退した」といってもよかったのではないか。
 この結果を、「日刊ゲンダイ」のように、「この国の民主主義は絶望」「この国の民意は支離滅裂」のように言うことは、まったく当を得ていない。現実は、民意は安倍・自民党政権からやや離れようとしている、しかしその票は行き場を定められなくて、あちらこちらに彷徨っているというのが、順当なところではないか。だから棄権が47%も出たのだ。
 その離れようとしている票のほんの極々一部が、共産党、公明党に回ったのだと考えた方が分かりやすい。民主党が11人伸びたのは、前回が酷すぎたそのより戻しが回っただけで、決して支持が回復している証しだとは言えない。総選挙直後の共同通信の世論調査では、今回の選挙結果について、「よかった」27%、「よくなかった」27%、「どちらともいえない」45%、アベノミクスで景気が良くなると思うかに、「思う」27・3%、「思わない」62.8%、憲法改正に「賛成」35.6%、「反対」50%とある。至極順当なところではないか。
 安倍・自民党政権からやや離れようとしている票の多くを棄権に回らせたその責任は、主として民主党にあるのではないかと思う。今回政権が総選挙に訴えた最大の理由は、消費税不況にある。この4月からの消費税の引き上げは、2四半期連続の景気後退を招いた。この点に関しては、どのマスメディアにもどの政党にも異論はない。だがどちらにも異論がないのをよいことに、「消費税値上げがよかったのか、悪かったのか」について、徹底して議論を避けたのが、当のマスメディアと民主党だった。反対に徹底して議論したのが、議席を伸ばした共産党と公明党(もっとも軽減税率についてだけだが)だったのだ。
 深刻な景気後退を招いたにもかかわらず、なぜマスメディアと民主党は議論を避けたのか。マスメディアの意図ははっきりしている。2年前に財政再建を理由として声高に消費増税を主張した責任逃れと、3年後の消費増税を再び実現したいからである。民主党の意図も似たようなものではないか。自公を誘い込んで、マニフェスト・公約にもない消費増税に突っ走った民主党政権に対して、しかもその件について一切口をつぐんでいる民主党に対して、民意はいまだに「ノー」と言っているのではないかと思う。
 とすれば、日本の民意もまだまだ捨てたものでないと思うのだが、どうだろうか。