「自分が死んだら先祖代々のお墓に入れてもらうように兄にいってあるんだ」とおっしゃっていた方が亡くなりました。もうその兄は亡くなって甥の代になっています。墓地の管理者である甥にとっては、小さいときにしかあったことがない叔父さん。「遺骨をひきとってくれ、と今更言われても・・・」と思う気持ちがあったのでしょうか、甥は遺骨をひきとってくれませんでした。自分の兄に口約束で了解をもらっていても、その下の代が「叔父さんには世話になったから」と心よく死後のことをやってくれるは限りません。
こんなこともありました。96歳の方の家が電気もつかず、廃墟同然に崩れかかっていたため、取り壊す前に家の中を確認したことがありました。携帯のライトで足元を照らしながら、中に入ると、なんとなんと、埃をたくさん被ったままの御遺骨が白い布(殆ど茶色)に包まれて埋もれていました。その後、色々調べた結果、30年前に亡くなった御主人の御遺骨は山口県のお寺に埋葬されることなく、ずっとその場にあったそうです。家をガシャンと壊すときに御遺骨も一緒に・・・と思うとゾッとしました。この方の御遺骨はきちんとお墓に納骨してさしあげたい、と思い、山口のお寺や御親族に連絡し、無事、新幹線で御遺骨を運んで納骨と供養ができました。
お寺では、お墓に入れない仏様の御遺骨がほんとに沢山安置されている、という話を聞きますが、行き場のない遺骨がこれからはもっと増えることが予想されています。最近は、いろいろな方法で散骨したり、加工してペンダントにしたり、必ずしも遺骨がお墓に入らなくもいい時代となりました。でも、口約束では何もできません。きちんと遺言書に記しておくこと、任意後見契約の際に死後事務委任契約によって、死後のことを委任しておくことが必要です。