2014年 12月の記事一覧

«Prev1Next»
14年12月29日 15時18分44秒
Posted by: kuriyama
2年前の消費増税導入時ほどではないが、依然として「財政再建」についての議論がかまびすしい。いわく「日本の財政赤字は1,000兆円超」「このままいったら日本は近くギリシャ並みになる」「孫子の代にまで、このような借金のツケ回しをしてもいいのか」などなど。
 私は、経済学に関しては全くのド素人、門外漢なのだが、このような「財政再建論」に関しては、どうしても「はてな?」と首をかしげてしまう。「日本の財政赤字1,000兆円超」ということだが、会計についての初歩(会計「学」までもいかない)を教わると、「資産」が「負債」を超えれば黒字、逆なら赤字、負債と資本金を足したものよりもまだ少なければ「債務超過」となるということになる。とすると、日本の現在の財政赤字は1,000兆円超丸々ではなくて、負債から資産約600兆円を引いた約400兆円となるのではないだろうか(勿論400兆円でも相当の巨額ではあるのだが)。お役人や高名な経済学者の先生は、このことを知らないのだろうか。いやそんなはずはない。百も承知なのである。ただ「日本の赤字1,000兆円超」と言った方が、「これは大変だ」「大変だ」と脅かすのによいということで、この数字を使っているのではないだろうか。また日本の国民金融資産は、2014年前半で約1,500兆円もあり、これは世界でアメリカに次いで2番目に多い(日銀発表)。
 もう一つ、小泉内閣のとき、医療費の増大を抑えるとして、医療制度改革が施行されたことがあった。単年度2,200億円、5年で1兆1千億円を削減した。たった1兆1千億円だったが、国民生活へのしわ寄せは、深刻なものがあった。医療機関に6ヶ月以上入院していたり、病床数200以上の大病院の診察を紹介状なしで受けたりすると、これは「選定療養」(好き好んでで選んだ療養)だということで、前者は強制的に退院させられ、後者では初診料として2,000円也が加算・徴収された。また銚子市立病院や大月市立病院など、いくつかの公立病院が倒産し、地域住民の医療に深刻な打撃をもたらした。
 だがこれでも節約できたのは、たったの「1兆1千億円」だった。この調子で節約していくとすると、400兆円節約するのには、2000年弱、1,000兆円節約するのには、5000年弱掛かることになる。「この年月の間、痛みに耐えなさい」と言うのですか、ということになる。「この額では財政再建にはまだ不足だ、もっと早く償還しろ」というのだと、もっと国民生活に犠牲を強いることになる。これでは「孫子の代へのツケ回し」どころではなくなってしまう。
 「それではどうするのだ」「財政赤字を放置しておけというのか」「それでは余りに無責任だ」「問題外だ」という識者からの問いが返ってきそうだが、もとより私は経済については門外漢であり、有効な処方箋など出すすべもない。ただ経済施策については、まず国民生活を基準にして、国民生活を守りながらどうするのかというところから、論じていく方がよいということを、唱えたかったに過ぎない。
14年12月20日 14時30分45秒
Posted by: kuriyama
12月14日に投開票された総選挙の結果には、それなりに納得させられた。
 といっても、「自公大勝」を歓迎するというわけでもない。果たしてそれほど「自公が大勝」したのだろうか。現実は自民は3人減だった。公明4プラスと合わせてもプラス1である。突然の解散と「アベノミクス」による必死の株価の吊り上げにも拘らず、3減とは、解散によって予期した成果は上げられなかったといってもよいのではないか。少なくともマスメディアの宣伝とは裏腹に「やや後退した」といってもよかったのではないか。
 この結果を、「日刊ゲンダイ」のように、「この国の民主主義は絶望」「この国の民意は支離滅裂」のように言うことは、まったく当を得ていない。現実は、民意は安倍・自民党政権からやや離れようとしている、しかしその票は行き場を定められなくて、あちらこちらに彷徨っているというのが、順当なところではないか。だから棄権が47%も出たのだ。
 その離れようとしている票のほんの極々一部が、共産党、公明党に回ったのだと考えた方が分かりやすい。民主党が11人伸びたのは、前回が酷すぎたそのより戻しが回っただけで、決して支持が回復している証しだとは言えない。総選挙直後の共同通信の世論調査では、今回の選挙結果について、「よかった」27%、「よくなかった」27%、「どちらともいえない」45%、アベノミクスで景気が良くなると思うかに、「思う」27・3%、「思わない」62.8%、憲法改正に「賛成」35.6%、「反対」50%とある。至極順当なところではないか。
 安倍・自民党政権からやや離れようとしている票の多くを棄権に回らせたその責任は、主として民主党にあるのではないかと思う。今回政権が総選挙に訴えた最大の理由は、消費税不況にある。この4月からの消費税の引き上げは、2四半期連続の景気後退を招いた。この点に関しては、どのマスメディアにもどの政党にも異論はない。だがどちらにも異論がないのをよいことに、「消費税値上げがよかったのか、悪かったのか」について、徹底して議論を避けたのが、当のマスメディアと民主党だった。反対に徹底して議論したのが、議席を伸ばした共産党と公明党(もっとも軽減税率についてだけだが)だったのだ。
 深刻な景気後退を招いたにもかかわらず、なぜマスメディアと民主党は議論を避けたのか。マスメディアの意図ははっきりしている。2年前に財政再建を理由として声高に消費増税を主張した責任逃れと、3年後の消費増税を再び実現したいからである。民主党の意図も似たようなものではないか。自公を誘い込んで、マニフェスト・公約にもない消費増税に突っ走った民主党政権に対して、しかもその件について一切口をつぐんでいる民主党に対して、民意はいまだに「ノー」と言っているのではないかと思う。
 とすれば、日本の民意もまだまだ捨てたものでないと思うのだが、どうだろうか。
«Prev1Next»