障がいのある子どもに出会いました。その子は友だちが自分の名前を書いているのを見て自分も,自分の名前を書こうとしました。

しかし,どうしても手が思うように動かず,書くことができません。他にも友だちと同じように字を書こうとするのですが,友だちのように書くことができないのです。

その子の目には涙が浮かんでいました。

友だちは書けるのに自分は書けない,そういったことのショックやもどかしさがあったでしょう。何でできないのかといった葛藤の中でさらに名前が書けないといった「できない」という事実がその障がいのある子どものの小さな胸をギュッと締め付けます。

その経験の中で,自分の可能性に疑問を持ち,自分に対する希望の明かりに陰りがさしてきてしまいます。そして自信がなくなってきて,様々なマイナス思考要因が育まれていってしまうのです。

障がいのある人にとってできないことは教えてもらわなくても,ひっきりなしにつきつけられてきます。そういう中にあっては,逆にできないことを嘆くよりも,できることを発見して,そこから自信の芽を育むことの方が本当は大切なのでしょうがなかなかうまくいかないものです。

違う障がいのある子どもが,将来の夢の発表で「路面電車の運転手になりたい」と発表しました。そのこの担任からの「無理な夢を抱いているのでどうやってあきらめさせたらいいでしょう」と言われました。

誰でも小さな時に大きな夢,時には大きすぎる夢を持ってしまうものです。成長とともに現実が突き付けられ,現実との闘いの中で非行や問題行動を見せる子どももいるでしょう。しかし,そうやって人は成長していくもの。

どうして,障がいのある子どもはその夢を早く捨てるよう促さなければならないのか,その先生の意図が分かりませんでした。

一方で,以前,障がいのある青年が相談に来ました。まあ,とにかくがんばってみようと励ますと「どうせできんから」そう言うのです。

「あなたには無理」と教えられ,できない可能性を植え付けられた結果,その心からはそんな言葉しか出てきませんでした。私はそこで自分にも言い聞かせている言葉を伝えました。
 鳥の仲間であるペンギンやダチョウが空を飛べないことばかり嘆いていたら,広大な海の世界でのびのびと泳ぐ姿や,力強く颯爽と走る姿は見られなかったかもしれないよ。自分にもできることは必ずあるはずだから,できないと嘆くばかりじゃなくて,できることを一緒に探して,見つけようと。

冒頭で紹介した子どもも,実は現在はもう高校を卒業しています。そして,電動車椅子と出会い,大きく自分の世界を広げることができました。そして,違う自分の可能性を発見して,自信を取り戻すことができたようです。