最近は新聞紙上やテレビなどで成年後見制度という言葉をよく見聞きするようになりました。当事務所も専門的に扱っている業務ですが,いったい成年後見制度とはどんな制度なのでしょうか?

今回はごく簡単に成年後見制度についてまとめてみました。

後見制度は,判断能力が不十分な成年者に対して,家庭裁判所が選任した後見人等が,ご本人を支援し,同時に本人の権利を守る制度です。複雑な福祉の契約などを,ご本人の利益を考え,代わりに行うだけでなく,悪質な商法からご本人を守る役割も果たします。一方で,権利の制限や資格制限を受けることもあります。以下に,さらに詳しく触れていきたいと思います。

成年後見制度のメリットは,現在の複雑な経済システムや契約システムから本人を保護することだと考えられます。後見類型では,本人のできること(日用品の買い物等)を限定することで,様々な契約等を後見人がすることにして本人を保護することにしています。

保佐類型では,重要な法律行為をあらかじめ決めておき(民法13条1項)その範囲で保佐人の同意を要することにしています。また,被保佐人と保佐人の任意で特定の行為について代理権を保佐人に付与することができます。

保佐類型では本人を保護するとともに,本人の意思による自己決定の範囲を後見より広げています。

補助類型では,保佐における重要な法律行為の範囲で補助人の同意権を付与することができます。また,特定の行為について代理権を補助人に付与することができます。同意権,代理権いずれも被補助人と補助人の当事者間で決めることになっており,費補助人の自由意思を尊重する形となっています。

成年後見制度のデメリットとしてあげられるのは,被後見人,被保佐人に対する資格制限です。

被後見人,被保佐人ともに制限されるものとしては,法人,会社等の役員,また,医師,各士業,教員等の資格,事業の許可・認可・指定等,公務員等の地位,が取り消されることになります。

被後見人ではさらに,取り消される資格,許認可の範囲が広くなるだけでなく,選挙権や,被選挙権がなくなってしまいます。

選挙権については民主主義の基本的権利であること,また,後見登記がなされなければ同じ状態であっても,選挙権のある人,ない人となり,権利擁護の制度である成年後見制度を利用することで権利がなくなることから批判も多くあります。

また,印鑑登録も抹消されます。

このように,成年後見制度には大きなメリットもある一方でデメリットも存在します。ご本人の生活の状況や価値観等配慮しながら,制度の利用を考える必要があります。