現在の社会保険庁は、厚生労働省の「外局」として置かれている。
 「外局」は、特殊な事務を掌理させるために、府・省に置かれる国の行政機関であり、国家行政組織法上、庁と委員会がある。
 外局も各大臣の所轄の下に属するが、通常の本省内部部局と異なり、これと併立する。
 条文上も、「各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務についてこれを統督する」と規定されている。
 社会保険庁の一連の不祥事の責任追及に関して、安倍首相が、歴代の「厚生労働大臣」ではなく、「社会保険庁長官」の責任追及の検討を指示したのは、以上に理由に基づくのである。
 ところで、社会保険庁改革関連法案は、社会保険庁を廃止し、新たに非公務員型の法人として「日本年金機構」を設立するとともに、併せて、サービスの向上、保険料の収納対策の強化等を推進するために提出されている。
 すなわち、社会保険庁長官が行うと定められている業務は、厚生労働大臣が行うことに改めるとともに、厚生労働大臣は、法人に権限の委任及び事務の委託をして行わせることとするのである。
 したがって、厚生労働大臣が公的年金に係る財政責任・管理運営責任を担うことにする一方、法人は厚生労働大臣の直接的な監督の下で、一連の運営業務を担うことになるのである。
 この法案が成立すると、年金に関する不祥事が発覚したら、その責任は「厚生労働大臣」が負うことになる。
 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。