会社法施行以前は、株式会社の取締役、監査役は定款で選任できたが、代表取締役は設立時といえども選任された取締役が取締役会で選任し、有限会社は取締役、代表取締役、監査役とも定款で選任できるとされていた。会社法になって、有限会社は原則廃止され、そのかわりに従来の有限会社的な形態の株式会社も設立できるようになった。設立手続きの方もそのような「旧有限会社的株式会社」の場合は従来の有限会社のものを継承しているようだ。一番顕著なのが取締役選任の場合の書類の実印押印、印鑑証明添付の真正担保の方法である。その区分は「取締役会設置会社」を旧株式会社型、「取締役会非設置会社」を旧有限会社型とみたてているようである。そのように考えると旧株式会社型である「取締役会設置会社」は役員選任の場面でも旧株式会社のように取締役、監査役は定款で選任できたが、代表取締役は設立時といえども選任された取締役が取締役会で選任し、旧有限会社的な「取締役非設置会社」が取締役、代表取締役、監査役とも定款で選任できると考えていた。
 先日、取締役会設置会社の会社設立書類の作成があり、定款を作成し、神田公証役場に内容の確認をお願いした。すると、その時の担当公証人であった日本公証人連合会会長筧康生先生からこのようなお話をいただいた。「これでもいいですが、取締役設置会社でも代表取締役を定款で設置できますよ。」私の頭の中では旧有限会社型と旧株式会社型は従来どおりの線引きがなされていると思っていたのだが、若干違ったようだ。定款で代表取締役が選任できるとなれば、代表取締役を選任する取締役会議事録が省けることになる。正直、最初は半信半疑だったが登記も完了してきているようだ。
 「用語は多少変わったが多くは従来どおり。」という私の認識もはずれているとは思わないがこの例のように交わるところもあるようである。