これは先にブログで記した「朋有り。遠方より来たる。亦楽しからずや」と「歌声喫茶をゆく」両者に関わる追想である。
 今から5~6年前、先に紹介したポーランドの友人に招かれてポーランドを訪問した。前後2週間の旅だったが、その途中ではスリ(列車でやられた)と下痢(生水を飲んだ)に悩まされてえらく往生した。何とか旅を終了して帰国する前々日にワルシャワに戻ってきた。ちょうどお昼頃ワルシャワ広場に着いて、少し休憩しようかなと思っていると、その中心部から音楽が聞こえてきた。
 ワルシャワ広場は、ちょうど東京駅の丸の内広場ぐらいの大きさで、第2次大戦時にナチスに滅茶滅茶に破壊されて、瓦礫の山と化した広場である。ナチスの敗北後すぐに、ワルシャワ大学の学生が中心となって、手造りで敷石からビルに至るまで、一つ一つ復元したと言われている。その中心部から音楽が聞こえてきた。広場の真ん中にパラソルが置かれていて、そのもとで60歳過ぎのひとりのお爺さんが手風琴を弾いていた。手風琴は日本のアコーディオンの半分ぐらいの大きさである。弾いている音楽はどうも日本で聞いたことがある曲だった。そう思って耳を傾けていると、思い出した。そうだ。新宿の歌声喫茶で聞いた(平和を願う)「願い」という曲だった(歌詞を紹介するのは著作権に触れる可能性があるのでやめておく。歌集に載っている)。
 日本の歌がこんなところにまで流れてきている、これはロシア経由でもアメリカ経由でもない。どこから伝わってきたのだろうか。そう思うと同時に、歌の力に今更ながら感服した。そしてその広場には2時間ほど足を止める仕儀となってしまった。これは遠路はるばるポーランドまで来た話題の一つになるかなと痛感した次第である。