10月19日(火)、文京シビックセンターにて、東京都行政書士会文京支部主催の無料相談会に参加しました。
 私が受けた相談の一つをご紹介します。

 相談者は、上品な感じの老婦人で、昔はさぞかしお綺麗な方であったろうと想像されました。しかし、ご主人に先立たれ、お子さんもいなく、現在は一人で暮らしているそうです。
 その方は、昔郊外に買った土地(地目:山林)があるそうですが、たった一人のごきょうだいの方に贈与の話を持ちかけたところ断られてしまい、今は誰も引き受け手がなくて困っているそうです。
 確かに田舎の土地、しかも山林となれば、不動産価格が大幅に下落しているため、ひどいところは平米当たり数十円などという場合もあります。登記手続きにかかる費用のことを考えると、もらってもかえって有難迷惑という場合もあるかもしれません。
 一方、山林はすでに底値を打ったという噂が流れ、中国人を中心に買いあさっているという話も聞きます。だから、とりあえず不動産屋さんに行って相談し、売却の可能性がないか尋ねてみてはいかがかとお話しました。
 それでも買主が見つからず、しかも、相続人の引き受け手がない場合、故人の遺産は国庫に帰属されることになります。そのときは、利害関係人や検察官の請求によって、相続財産管理人が選任され、相続人や特定縁故者がいないと確定した時点で、国庫に帰属します。
 具体的手続きに立ち合ったことがないので詳しいことはわかりませんが、請求がなければそのまま放置されるかもしれません。また、国庫に帰属されれば、荒れ放題にしておくこともできないでしょうから、国がどういう対応を取るかは今一つわからない面もあります。登記簿上不動産所有者が故人のままになっている例はいくらでもありますし、所有者が行方不明になっている場合も少なくありません。昔死んだはずの人の名が戸籍に記載されていることが、マスコミで報じられ騒がれましたが、それと同様のことが、不動産の世界ですでに起こっているのです。お一人様で亡くなる高齢者がますます増えていく中、今後、所有者不在の土地のことが社会問題化するかもしれません。

 「もし、誰も引き受け手がなかったとしても、ごきょうだいや甥姪の方に損害を与えることはありませんよ」
と答えると、ご夫人は、
「それで、安心しました」
と、ニッコリ微笑まれました。 
 どうやら、彼女にとって、そのことが一番の心配の種だったようです。しかし、その前に、「不動産屋さんに相談してみてくださいね」と念を押しておきました。
 今は、お元気なようだけど、10年後には健康上の問題や判断力の低下に伴う問題を抱えることになるかもしれないとふと思いましたが、相談内容とは直接関係なかったので、口にはしませんでした。
 ご夫人はていねいにお礼を述べると、美しいたたずまいで去って行かれました。



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