「政府は必ず嘘をつく」堤未果/角川マガジンズ/2012

 昨年、東北や関東地方を襲った大地震によって、福島第一原子力発電所の原子炉燃料がメルトダウンし、その複数の原発内に溶融した燃料がどこに行ったかわからないという事態が継続しています。完全密閉されているわけではないので、相変わらず水蒸気とともに屋外へと放射性物質が飛散し続けているにもかかわらず、現状を政府は「冷温停止」状態と強弁しています。
 事故当時、TVなどでは原発が次々と爆発する映像を背景に権威ある〇〇大学の教授が「これは爆破弁を作動させた映像で・・・」などとのたまっていたり、「プルトニウムは飲んでも安全」などという東大の先生がいたり、「放射線障害は気の病」「放射線の影響はニコニコ笑っている人には来ません」などとふざけたことを言う放射線医学の「放射線リスク管理アドバイザー」まで現れる始末をご記憶の方も多いことと思います。山下俊一という方ですが。メルトダウンしていることがわかるまで「メルトダウンはあり得ない」と叫び続けた有名大学の先生もおりました。

 あの混乱の中で、改めて「原子力村」なる国会議員、経産省、学会、電事連その他の莫大な利益のあがるうま味のある利権に縛り付けられた人々から構成される「村」の存在が明らかになったわけですが、何も急に村ができたわけではなく、大昔、原子力というものを国策として推進すると決定した時から徐々に構築され、長きにわたって「旨い汁を吸ってきた」わけです。その「旨い汁を吸ってきた」人々がどのような人々であったかは、前述の一例でも十分にお分かりかと思います。

 その旨い汁を吸うことを潔しとしなかった先生方に、京大原子炉実験所の助教連がいました。彼らは事実と良心に基づき、嘘をつくことができず、従って教授になることもできず、それでも信念を貫いてその危険性を訴え続けてきたわけですが、社会は耳を貸さず、マスコミも報道することもなく、知る人ぞ知る存在としてメインストリームからは排除されてきたのです。その人々が訴え続けてきたことが、こうした大事故が起こって初めて正しかったとされ、耳を傾ける人が増えたことは、歴史上、幾多も繰り返されてきたことながら実に皮肉な話です。

 また、あのような下劣な(失礼!)学者連の映像を流し続けたマスコミに対する信頼は、本来であれば失墜していなければならないのですが、どうも世間はそうなっていないようだということが気にかかります。

 先ごろ、リビアのカダフィ大佐が惨殺されました。
 おそらく多くの人の頭の中では「あーあの独裁者ね!自由も民主主義もない可哀想な国の人々がついに怒って反乱して殺されたんでしょ?NATOも民衆を救うために爆撃して反政府軍を助け、国民を救ったんだよね」といった認識だと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。この本から、リビアの現実を良く知る人のコメントを引用してみましょう。
 「私はリビアにたくさん友人がいるけれど、彼らは高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに思っています。アフリカ大陸でもっとも生活水準が高いリビアでは、教育も医療も無料で、女性も尊重されている。日本の人たちは、そういうことを知っていますか?国民は、電気代の請求書など見たことがありません。42年間も政権を維持できたことには、ちゃんと理由があるのです」
 もう少しこの本の引用を続けます。「ヴェロニカ(先のコメントの主)が言うように、リビアはNATOの侵攻前までブラジルやロシアよりも高い生活水準をもつ国だった」「カダフィはすべての国民にとって、家を持つことは人権だと考えており、新婚夫婦には米ドル換算で約5万ドルもの住宅購入補助金を、失業者には無料住宅を供給し、豪邸を禁止していた。車を購入するときは、政府が半額を支払う。電気代はかからず、税金はゼロ。教育、医療は質の高いサービスが無料で受けられる。もし、国内で必要条件に合うものが見つからなければ、政府が外国へ行けるよう手配してくれる。大家族の食糧費は固定相場、すべてのローンは無利子でガソリンは格安。農業を始めたい国民には土地、家、家畜、種子まですべて国が無料で支給、薬剤師になりたい場合も必要経費は無料だ。42年前、カダフィが権力の座に就く前に10%以下だった識字率は、今は90パーセントを超えている。これらの政策を可能にしていたのは、アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源だった。」
 如何でしょうか。そんなことご存知でしたか?私はなかなかいい国だと思うんですが、そのような国を作れた原因が石油だったということを除いて。
 「2011年7月1日、リビアのトリポリにある「緑の広場」では、大勢のリビア国民が集まり、NATOの爆撃に抗議した。その数、およそ170万人。トリポリの人口の約95%、全リビア国民の約3分の1だ」
 つまり、圧倒的多数の国民が望まない爆撃を、国民のためと騙って強行したのはNATOなのですが。。。
 これ以上詳細には立ち入りませんが、詳しく知りたい方はぜひ本書を導き手に、ご自分で調べてみては如何でしょうか。湾岸戦争もそうでしたが、フセインは元々アメリカの傀儡でした。役に立たなくなる、あるいは目障りになると色々と難癖をつけて(たとえばテロ国家とか)消してしまえ、というのはアメリカの伝統的な手法なんですが。ましてカダフィは反米、反イスラエルですからね。。。
 最後に耳の痛いコメントをどうぞ。「日本のニュースの中身は、アメリカの通信社からくる情報でしょう?BBCやCNN、アルジャジーラが報道したあの内容に、ロシアは反論しました。市民の暴動を初めから衛星中継で記録していたロシア軍高官は、カダフィによる非武装抗議者に対する空爆は断じて行われていないと断言したのです。これについては米国国防総省でさえ、そうした攻撃は確認されていないと認めています。日本の人たちは優秀なのですから、そろそろ政府やマスコミの言うことを自分で調べたらどうですか?」
 ちなみになぜアルジャジーラが豹変したかは、本書をお読みになれば分かります。