2007年 3月の記事一覧

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07年03月31日 17時22分55秒
Posted by: shigyo
 当事務所では、会社設立の登記が終われば、もうおしまいというわけではありません。
 会社が成立すると、まず税務署、都道府県税事務所、市区町村役所に(東京は2箇所)、「法人設立届書」を提出しなければなりません。次に、(1)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、(2)青色申告の承認申請書、(3)給与支払事務所の開設届出書、も提出する必要があります。(1)は、源泉徴収したものは翌月10日までに税務署に支払うのが原則なのですが、それでは大変なので、半年に1回支払えば済むようにするためのものです。(2)は、創業当初赤字でも5年以内は繰り越せるというもので、申請しておく方が有利です。(3)は、給与を支払う従業員を雇うのであれば、当然必要となります。ここまでは、当事務所でも代行いたします。これ以上の会計記帳、決算書の作成、確定申告書の作成等の税務関係は、当事務所が提携している税理士の方をご紹介いたします。
 会社が成立して、次に必要となる届出は、労働保険(労災・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)の新規適用届です。法人の場合、労働者(従業員)を1人でも雇えば、労働保険・社会保険ともに強制適用事業所となりますから、双方ともに届出る必要があります。現在、労働保険には加入していながら、社会保険には加入していない法人が少なからずあり、厚生労働省も加入を呼びかけているところです。当事務所では勿論これらの届出を代行いたします。
 さらに、就業規則の作成や、退職金制度をどのようにするかとか、賃金形態を含めた人事労務管理に関するサポートも致します。これで、事業主様は経営に専念できるというわけです。
 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。
07年03月27日 14時22分04秒
Posted by: shigyo
 会計参与制度は、新会社法で新設されました。会社債権者や株主にとって、会社の会計が正確に処理され、公開されるということは、必要不可欠なことです。そこで、企業の会計分野をチェックして企業としての健全性を確保するための機関として、株主総会の決議で選任される会計参与を設けました。
 企業会計には専門的知識が必要なため、会計参与になるためには、公認会計士・監査法人か税理士・税理士法人でなければなりません。適正な会計チェックという観点から、会計参与は、株式会社又は子会社の取締役、監査役、支配人等の使用人を兼ねることができません。
 会計参与の基本的な職務は、取締役と「共同」して、計算書類を作成することです。「共同して作成する」ということですから、取締役と会計参与との一致した意見に基づかなければ、計算書類を作成することができないことになります。取締役と会計参与の意見が対立すると、計算書類の作成ができなくなるのです。
 このように、共同して計算書類を作成し、さらに取締役とは別に計算書類を保存・開示する職務を担うことによって、取締役による計算書類の虚偽記載や改ざんを抑止し、計算書類の記載の正確さに対する信頼を高めることができるのです。
 しかし、この制度はうまく機能するだろうか。私の知り合いの税理士の方に、「会計参与になってくれという誘いが来たときは、どうしますか。」と尋ねたところ、引き受けたくないという返事でした。それは、会計参与は、社外取締役と同様に、会社及び第三者に対して責任を負うからなのです。会社に対する責任については、株主代表訴訟の対象にもなるのです。これらの責任は、任務懈怠ないし悪意又は重大な過失があったときの損害賠償責任ですから、任務懈怠や悪意・重過失がなければ責任を負いません。税理士さんに期待を寄せるものです。
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 今回はこの辺で。
07年03月26日 18時37分47秒
Posted by: shigyo
 株式会社設立は、発起人による定款の作成で始まります。定款に必ず記載しなければならない事項は、(1)目的、(2)商号、(3)本店の所在地、(4)設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、(5)発起人の氏名又は名称及び住所、の5つだけです。これらは絶対的記載事項といって、この中の一つでも記載してなかったり、記載内容が法律に違反するときには、定款そのものが無効となります。しかし、実際には、何十条もの記載がある定款が通常です。
 それは、絶対的記載事項以外に、定款に必ずしも記載する必要はないが、定款に記載しなければ効力を生じない相対的記載事項があるからなのです。また、絶対的記載事項・相対的記載事項以外のことでも、公序良俗や株式会社の本質に反しない事項は、定款変更手続が厳格なため法的安定性を求めて定款に記載することが普通なのです(任意的記載事項)。
 新会社法は、この相対的記載事項を大幅に増やし、定款自治を拡大しています。このことは、株式会社における定款の重要性を意味しています。例えば、株式会社の機関設計を見てみましょう。株式会社の必置機関は、株主総会と取締役のみです。これは、全部株式譲渡制限会社(非公開会社)は、大規模公開会社をその本質とする株式会社より、むしろ小規模閉鎖的な有限会社に近い実態を有しているため、会社法で株式会社と有限会社を一体化するに当たり、有限会社においてのみ認められていた機関設計を認めることにしたものです。そして、取締役会、監査役、会計参与などは定款に定めることによって置くことができるようにしました。
 それでは、取締役しかいない会社と取締役会も設置している会社とを見てみましょう。株主総会の権限の大小もさることながら、一般人としては、前者はワンマン経営のイメージがあるのに対し、後者は取締役が3人以上の合議により業務執行の意思決定を行っているため、適正な経営のイメージが概してあります。また、取締役会設置会社は監査役を置かなければなりませんが、取締役会を設置していない会社でも、監査役か会計参与(取締役と共同して計算書類を作成する会計のプロ)を設置していたとしたらどうでしょう。会計処理をチャンとやっている会社として、会社に対する社会的信用が増すでしょう。もっとも、形だけの監査役や会計参与では困りますが。
 このように定款自治が拡大したということは、定款を見れば、この会社はどのような会社なのか、どのような理念をもって、どのような経営を行おうとしているのか、が分かるということです。ここに定款の重要性があります。実際、登記事項ではない重要事項が定款記載事項とされていることもあり、銀行の融資実務においても、定款の重要性が再認識されているようです。
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 今回はこの辺で。 
07年03月24日 18時01分01秒
Posted by: shigyo
 株式会社を設立しようとするときに、自分一人で資金を賄えるのであれば問題はない。しかし、どうしても資金が足りないとき、出資してもらうべきか、それとも融資を受けるべきか、悩まれると思います。
 融資の場合、融資をした銀行や国民生活金融公庫は単なる消費貸借の債権者に過ぎないのに対し、出資の場合、出資者は株式会社の構成員(株主)となるという決定的違いがあります。
 そのため、融資の場合には、借金を返済してしまえばそれで終わりですが、出資の場合には、その出資者の株式を取得しない限り、株主としての権利を行使してきますから、会社を設立してワンマン経営をして行こうと思っていても、他に出資者がいたら中々思うように行かない場合が生じてきます。
 そうです。その出資者がたとえ取締役として業務執行に携わっていなくても、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる株主総会において、議決権を行使してくるのです。株主総会の決議要件には、定款に別段の定めがなければ、(1)普通決議(株主の議決権の過半数が出席しその過半数で決議)、(2)特別決議(株主の議決権の過半数が出席しその3分の2以上で議決)、(3)特殊決議1(株主の半数以上でかつ当該株主の議決権の3分の2以上で決議)、(4)特殊決議2(総株主の半数以上でかつ総株主の議決権の4分の3以上の決議)、の4つがあります。何か分かりにくいかもしれませんが、(4)は非公開会社が株主平等の原則と異なる定めを定款で定めた時の、その定款変更決議の場合ですから、ここでは置いておきましょう。
 そこで、過半数と3分の2以上がキーポイントになるわけですが、特に重要事項を決議するのに必要な3分の2以上が意味を持ってきます。つまり、他の出資者が3分の1を超える議決権を有していれば、重要事項を単独で議決できないことになります。
 このことから言えば、会社を設立して自由に経営をしたい事業主の方が、資金が足りないため他の人に出資を頼む場合には、出資比率が3分の1を超えないようにしなければなりません。でないと、自由な経営が出来なくなる虞があります。銀行等の金融機関は、融資はしても出資はしませんから、設立してから融資を受けましょう。
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 今回はこの辺で。
07年03月22日 16時47分38秒
Posted by: shigyo
 旧有限会社は、会社法・整備法施行日以後は、会社法の規定による「株式会社」として存続するものとされ、その商号中に「有限会社」という文字をを用いなければなりません。これが「特例有限会社」です。注意しなければいけないのは、「有限会社」という名前がついていても、新会社法上は「株式会社」であるということです。
 1 この特例有限会社の機関設計や任期、決算広告の要否等は、旧有限会社の場合と同じです。例えば、役員の任期については、新法の規定を適用しませんから、元々任期の定めがなかったのであれば、任期の定めなしということになります。また、監査役を設置していても、会計監査権限しかないことになります。さらに、決算広告の義務もないことになります。
 2 特例有限会社は、株式会社でありますから、旧有限会社の定款・社員・持分及び出資1口は、それぞれ特例有限会社の定款・株主・株式及び1株とみなされます。また、会社法・整備法の施行日における特例有限会社の発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、旧有限会社の資本の総額を当該旧有限会社の出資1口の金額で除して得た数となります。
 3 特例有限会社は、「定款」を変更して、その商号中に「株式会社」という文字を用いる商号の変更をすることによって、会社法上の通常の株式会社に移行することができます。そして、登記をすることによりその効力を生じます。この場合、組織変更ではありませんが、登記手続きは組織変更に準じます。すなわち、当該特例有限会社については解散の登記をし、商号変更後の株式会社については設立の登記をするのです。登録免許税は、解散の登記が3万円、設立の登記が、増資をしないのであれば、資本金の額が2000万円までは3万円であり、合計6万円です。当事務所の報酬額は、7万円と致しております。
 4 では、特例有限会社のままがいいのか、それとも株式会社にすべきなのか。この判断はかなり難しい。確かに、特例有限会社は役員の変更登記をしないでいいし、決算広告の義務もないからメリットがあるようにも思われる。しかし、あらゆる場面で情報公開が叫ばれる中で、目先のコストだけでそのままにしておいていいものだろうか。新会社法の下では、有限会社は新設できないので、いずれは消え行く組織形態であるが、それをそのまま維持することは、何もしない会社というレッテルを貼られはしないだろうか。実際、新会社法の下での銀行融資実務も厳しくなるものと思われます。
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 今回はこの辺で。
07年03月20日 19時06分35秒
Posted by: shigyo
 株式会社を設立する方法として、発起設立と募集設立の二つがあります。発起設立は、発起人が設立時発行株式数の全部を引き受ける方法であり、募集設立は、発起人が引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法です。募集設立では、発起人以外に株主を募集する手続や、株式引受人による創立総会開催の手続という、発起設立にはない複雑な手続が必要となるため、今ではほとんど発起設立となっています。そのため、ここでも発起設立(取締役会設置会社でなく、また監査役設置会社でもない会社)に絞ってその流れを見ていくことにします。
 1 商号・本店・目的などの会社設立の基本となる事項を決定します。商号はいわば会社の顔ですから、慎重に決める必要があります。他の商人と誤認される虞のある商号は、禁止されているだけでなく、不正競争防止法上の問題も生じるため、あまりありそうにない商号を考えるべきです。平成14年11月から商号にローマ字等を使用することができるようになりました。
   目的の適格性として、適法性・営利性・明確性が求められますが、登記できるかどうか事前に必ず登記官に確認を取っておきましょう。でないと、登記の段階で不受理となり、設立の予定が狂ってしまうことがあります。
 2 次に、類似商号の調査をします。新会社法の下では、同一の所在場所における同一の商号の登記のみ禁止されましたから、類似商号の調査は不要であるようにも思えますが、万が一ということがありますから、やはり類似商号の調査はしておくべきです。
 3 会社の印鑑を作ります。代表者印・銀行印・角印の三つです。代表者印は、会社成立の際、登記所に届出る会社の実印であり、印影が3センチの正方形からはみ出さず、かつ、1センチの正方形に収まらないものでなければなりません。角印は、会社が発行する契約書や請求書などに用いられるもので、いわば会社の認印です。ゴム印も作っておくと便利です。
 4 定款を作成する。定款は、会社の組織・運営に関する根本規則であり、いわば会社の憲法ともいうべきものです。新会社法は、定款に絶対に記載しなければならない事項として、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所の五つを挙げています。したがって、この中の一つでも欠けば、定款自体が無効となります。定款にはこの絶対的記載事項だけでなく、会社にとって重要な事項を記載するのが通常です。中には、発行可能株式総数の定め等のように定款で定めることによって、発起人全員の同意があったことを証する書面などが、登記に際して不要となることもあります。
 5 定款の認証を受ける。株式会社の定款は、公証役場において公証人の認証を受けなければ効力を生じません。本店を置こうとしている法務局または地方法務局に所属する公証人の認証を受ける必要があります。公証役場には、定款3通、発起人全員の印鑑証明書、収入印紙代4万円、認証手数料5万円、代理人が行く場合は委任状、代理人の印鑑証明書等を持参しなければなりません。
 6 出資の履行をする。発起設立の場合は、募集設立の場合のように、銀行等の株式払込金保管証明書までは必要ではなく、払込金受入証明書で足りるものとされ、それも、設立時代表取締役が作成した払込金額を証明する書面に、預金通帳の写しを合綴したものでもよいものとされました。これにより、残高証明を取れば、すぐに引き出してもかまわないことになり、会社の経営がスムーズに行くようになりました。
 7 取締役が調査をする。出資の履行が完了しているかや、設立手続が法令・定款に違反していないか等を調査します。
 8 登記申請書類を作成し、登記の申請をする。
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 今回はこの辺で。
07年03月19日 18時04分01秒
Posted by: shigyo
 昨年5月施行の新会社法により、有限会社は廃止され(勿論旧有限会社は特例有限会社として存続します)、持分会社の一つとして「合同会社」が新設されました。合同会社は、出資者の全員が有限責任であり、会社の内部関係は民法上の組合と同様の規律が適用される会社です。
 そこで、従来からほとんど利用されることのない合名会社・合資会社はさておき、起業者の方は、株式会社にするべきか、それとも合同会社にした方がいいのか、悩まれると思われますので、その違いを見てみましょう。
 1 最も関心があるのは、歴史が浅い合同会社よりも、株式会社の方が社会的信用度が高いのではないかという点でしょう。確かに、何億という資本金を有する大会社は、それだけで社会的信用度が高いということも言えるでしょう。しかし、社会的信用度は、会社設立から日々の会社経営の態度によって積み上げられていくものであり、生産管理の怠慢により折角築き上げた社会的信用を一挙に喪失してしまったYやFのことは、記憶に新しい。実際わが国にある会社のほとんどは、公開会社でない株式会社(全部株式譲渡制限付株式会社)と旧有限会社であります。旧会社法の下において、株式会社の方が有限会社よりも社会的信用度が高いように思えていたのは、一つには、株式会社は1000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度があり、この差によるものだと思います。ところが、新会社法では、この最低資本金制度は撤廃され、株式会社も理論上は1円で設立できるようになりました。勿論、合同会社も理論上は1円で設立できます。こうなってくると、社会的信用度は株式会社・合同会社という会社形態ではなく、どれだけ消費者に受け入れられるすばらしいものを創り出していくか、という会社の中身に左右されていくようになるのではないかと考えられます。
 2 株式会社も合同会社も、その株主又は社員は株式の引受け価額・出資の価額を限度とする有限責任であり、会社の債権者に対して、自己固有の財産を投げ打ってまでという無限の責任を負うことはありません。
 3 株式会社と合同会社で大きく異なるのは、会社内部関係の規律の強行規定性(法の規定に反することができないことをいう)です。新会社法では、株式会社においては、最低限、意思決定機関として「株主総会」と、業務執行機関として「取締役」を設置することが規定され、強行規定とされています。ただ、従来と異なり、取締役会を設置しなければ、取締役は3人以上もいる必要はなく、1人で十分なのです。また、監査役を置くかどうかも、原則として自由なのです。これに対して、合同会社においては、組合と同様に、広く契約自由の原則が妥当するため、業務執行等については強行規定がほとんどなく、定款で自由に定めることができます。
 4 次に、設立費用の違いを見てみると、株式会社の設立登記の登録免許税は、例えば資本金の額が500万円とすれば、15万円であるのに対し、合同会社では同じ資本金の額だとすれば、6万円であります。また、株式会社では、定款について公証人の認証を受けることが必要であるため、認証手数料として5万円、公証人が保存する定款原本についての印紙税が4万円、合計9万円少々が必要となります。これに対して、合同会社では、定款の認証は不要です。結局、法定費用だけで、株式会社は24万円なのに対し、合同会社は6万円で済みます。それに、類似商号の調査や定款の作成等を含めた会社設立支援報酬も、当事務所では、株式会社が10万円なのに対し、合同会社は7万円としております。
 5 このように見てくると、設立費用や手続からすると、合同会社に軍配が上がりますが、何せ新会社法が施行されて間がないため、合同会社の認知度が低い点が気になるかもしれません。しかし、新会社法は、専門知識やノウハウを持った少数の出資者が集まり、その知識などを活用して自らが経営を行う会社の設立を企図しているようです。ともあれ、最初は合同会社を設立しておいて、経営が順調になってきたら株式会社に組織変更をする、というのも一つの手かもしれません。
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 今回はこの辺で。 
07年03月17日 18時35分13秒
Posted by: shigyo
  今回から暫く会社設立に関する記事とします。
 初回はまず、個人事業で行くべきか、それとも会社形態にすべきか、悩んでいる起業家の方もおられると思うので、個人事業と会社とはどのように違うのか、そのメリット・デメリットを考えてみましょう。
 1 法は、権利義務の帰属主体として自然人と法人を予定しています。ですから、個人事業の場合、契約などをしたときに生じる権利義務は、個人の事業主に帰属します。これに対して、会社の場合、たとえ一人会社であったとしても、法律行為をした代表取締役ではなく、会社自身に帰属します。この点が、両者の根本的な違いであり、メリット・デメリットも多くはここから生じているものと思われます。
 2 会社にするメリットは、よく言われるように、社会的信用の違いです。個人事業の場合、社会的信用は事業主個人の人格や資産に依存するため、概して低いと思われるのに対して、会社の場合、個人とは離れて莫大な会社自身の資産やネームヴァリュウがあるため、社会的信用が高いのです。取締役の業務執行の適正を確保するため、会社法により様々な規制を受けることも、社会的信用を引き上げる要因となっているものと思われます。
 3 また、会社にすると、事業の継続性がある点もメリットとなります。すなわち、会社では、代表取締役や株主が代わっても、会社自身には何の変わりもなく継続しますが、個人事業では、事業主が亡くなると、事業は終了します。これは、例えば、息子が事業を継いだとしても、同じことです。息子さんは新たに事業を始めることになり、税務署に事業廃止届と事業開始届を提出することになるのです。親父さんの事業を息子さんが継ぐと、社会通念上は事業が継続しているようにも思えますが、法律上は一代で終わりなのです。
 4 株式会社や新会社法で設けられた合同会社では、株主や社員は有限責任であり、会社債権者に対して、出資の価額の限度でしか責任を負わないという点も、メリットでしょう。個人事業主は、事業用財産だけでなく、自己固有の財産をもってしても、債権者に対して責任を無限に負います。
 5 会社形態にすると、税法上の利点もあります。例えば、社長は会社から給料をもらいますが、会社はこれを必要経費に計上できるだけでなく、社長自身は給与所得控除を受けることができます。個人事業では、事業主に給料を出すことはできず、したがって、必要経費に計上することもできません。また、青色申告での損失の繰越控除ができる期間についても差があります。個人事業の場合は3年であるのに対し、会社の場合は5年ですから、当初の赤字を5年間繰り越して黒字から差し引くことができるのです。
 6 会社形態にすることがすべてメリットだとは限りません。例えば、会社を作るのに他の人に出資をしてもらったら、原則として、出資の割合で利益の配分をしなければいけないでしょうし、会社の意思決定においても、彼らの意思を尊重しなければならないことになると思われます。この点、個人事業の場合は、利益はすべて事業主のものだし、意思決定も事業主が自由に決定することができます。
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 今回はこの辺で。
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