株式会社を設立する方法として、発起設立と募集設立の二つがあります。発起設立は、発起人が設立時発行株式数の全部を引き受ける方法であり、募集設立は、発起人が引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法です。募集設立では、発起人以外に株主を募集する手続や、株式引受人による創立総会開催の手続という、発起設立にはない複雑な手続が必要となるため、今ではほとんど発起設立となっています。そのため、ここでも発起設立(取締役会設置会社でなく、また監査役設置会社でもない会社)に絞ってその流れを見ていくことにします。
 1 商号・本店・目的などの会社設立の基本となる事項を決定します。商号はいわば会社の顔ですから、慎重に決める必要があります。他の商人と誤認される虞のある商号は、禁止されているだけでなく、不正競争防止法上の問題も生じるため、あまりありそうにない商号を考えるべきです。平成14年11月から商号にローマ字等を使用することができるようになりました。
   目的の適格性として、適法性・営利性・明確性が求められますが、登記できるかどうか事前に必ず登記官に確認を取っておきましょう。でないと、登記の段階で不受理となり、設立の予定が狂ってしまうことがあります。
 2 次に、類似商号の調査をします。新会社法の下では、同一の所在場所における同一の商号の登記のみ禁止されましたから、類似商号の調査は不要であるようにも思えますが、万が一ということがありますから、やはり類似商号の調査はしておくべきです。
 3 会社の印鑑を作ります。代表者印・銀行印・角印の三つです。代表者印は、会社成立の際、登記所に届出る会社の実印であり、印影が3センチの正方形からはみ出さず、かつ、1センチの正方形に収まらないものでなければなりません。角印は、会社が発行する契約書や請求書などに用いられるもので、いわば会社の認印です。ゴム印も作っておくと便利です。
 4 定款を作成する。定款は、会社の組織・運営に関する根本規則であり、いわば会社の憲法ともいうべきものです。新会社法は、定款に絶対に記載しなければならない事項として、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所の五つを挙げています。したがって、この中の一つでも欠けば、定款自体が無効となります。定款にはこの絶対的記載事項だけでなく、会社にとって重要な事項を記載するのが通常です。中には、発行可能株式総数の定め等のように定款で定めることによって、発起人全員の同意があったことを証する書面などが、登記に際して不要となることもあります。
 5 定款の認証を受ける。株式会社の定款は、公証役場において公証人の認証を受けなければ効力を生じません。本店を置こうとしている法務局または地方法務局に所属する公証人の認証を受ける必要があります。公証役場には、定款3通、発起人全員の印鑑証明書、収入印紙代4万円、認証手数料5万円、代理人が行く場合は委任状、代理人の印鑑証明書等を持参しなければなりません。
 6 出資の履行をする。発起設立の場合は、募集設立の場合のように、銀行等の株式払込金保管証明書までは必要ではなく、払込金受入証明書で足りるものとされ、それも、設立時代表取締役が作成した払込金額を証明する書面に、預金通帳の写しを合綴したものでもよいものとされました。これにより、残高証明を取れば、すぐに引き出してもかまわないことになり、会社の経営がスムーズに行くようになりました。
 7 取締役が調査をする。出資の履行が完了しているかや、設立手続が法令・定款に違反していないか等を調査します。
 8 登記申請書類を作成し、登記の申請をする。
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 今回はこの辺で。