2007年 11月の記事一覧

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07年11月22日 11時23分17秒
Posted by: shigyo
 治癒の概念はそれぞれの場面で異なる。
 例えば、労災保険上は、「症状が安定し、疾病が固定した状態にあるものをいい、
治療の必要がなくなったもの」であるとされる。
 私傷病により休職していた者が、復職をする場合、会社は主治医や指定医の診断
をもとに職場復帰が可能かどうか、すなわち治癒したかどうかを判断する。
 ここにおける治癒は、「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したとき」と
解されている。この考え方によれば、従前の職務より軽度な職務は行えるが、従前の
職務を行うには困難である場合には、治癒したとはいえないことになる。したがって、
会社は復職を認めなくてもいいということになる。
 これでは、労働者の雇用の維持が失われる。
 ここにおいて、最高裁の画期的な判例が出ました(最判H10,4,9)(片山組事件)
 「職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結し、現場監督業務に従事していた労
働者がバセドウ病に罹患し、現場監督業務に従事することは不可能であるが事務作業
は行える場合に、会社が自宅治療を命じ、その間の賃金等を支給しなかった事案」につ
いて、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合において、現に
命ぜられた特定の業務についての労務提供が十全にできないとしても、能力、経験、地位、
企業規模、業種、労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置さ
れる現実的可能性があると認められる業務について労務の提供をすることができ、かつ
申し出ている場合には債務の本旨に従った履行の提供があると解すべきである。」
 この判例は、治癒したかどうかの問題とせず、現実的配置可能性の業務の有無を問題と
していることに注意が必要です。
07年11月19日 10時48分26秒
Posted by: shigyo
 労基法41条により、労働時間・休憩・休日の法規制の適用が除外される
管理監督者の範囲については、法律上の定義はなく、解釈に委ねられて
いる。
 行政通達によれば、管理監督者とは、一般的には部長、工場長等労働
条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者を
いう。名称にとらわれず実態に即して判断されます。
 したがって、企業が人事管理上の必要から任命する職制上の役付者の
すべてが管理監督者となるのではありません。
 職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を
超えて活動することが要請されざるを得ない重要な業務と責任を有し、
現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないような立場にある者に
限り管理監督者と認められます。
07年11月14日 11時08分07秒
Posted by: shigyo
  6ヶ月とか1年とかの有期雇用契約であっても、何度も更新をして期間の定め
がない契約と実質的に異ならない状態になっていたり、労働者に更新について
合理的期待がある場合には、解雇法理(労基法18条の2)の類推適用があり、
客観的な合理性と社会通念上の相当性がなければ、解雇は権利の濫用として
無効になります。
 そこで、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準が厚生労働省
により告示として定められ、平成16年1月1日から施行されています。
1 有期雇用契約の締結に際しては、期間満了後の契約更新の有無を明示する。
2 契約を更新することがあるときは、更新する場合、更新しない場合の判断基準
 を明示する。
3 1,2を変更する場合は速やかにその内容を明示する。
4 1年を超えて継続勤務している者を更新しないこととする場合には、期間満了の
 30日前までにその予告をする。
5 4の場合に労働者が更新しないことの理由の証明書を求めた場合には、遅滞なく
 これを交付する。
6 契約を1回以上更新し1年以上継続勤務している者の有期契約を更新する場合は、
 契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするよう努める。
07年11月13日 14時46分30秒
Posted by: shigyo
 退職には、労働者の一方的意思表示による辞職と、会社の承諾によってはじめて
効力を生じる合意解約の申込みというものがあります。
 一般には、前者は退職届、後者は退職願と言われていますが、厳格には分別され
ていないようです。
 この二つは、退職の意思表示の撤回可能時期、つまり一度退職の意思表示をした者が、
いつまでそれを撤回できるかに違いが生じます。
 前者であれば、解雇の意思表示と同様、単独行為としてその意思表示を撤回することは、
原則として許されません。
 後者の場合、合意解約の申入れに対する承諾の意思表示がなされるまでの間は、原則
として撤回することができます。問題は、どの時点で承諾があったといえるかなのです。
 判例では、退職願を受領する権限を有する者の受理によって承諾が行われたものと解さ
れています。したがって、社長のところまで行かなくても、職務権限規程上人事部長の決裁
が最終のものとされていれば、人事部長の退職願の受理によって会社としての解約申入れ
に対する承諾が行われたものと解されることになります。
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