事案は、「Xは昭和60年当時、旧国鉄九州総局鹿児島自動車営業所の運輸管理係であり、Y1は同営業所長、Y2は同営業所主席助役であった。当時国鉄は職場規律の乱れを内外から指摘され、その是正を課題としており、Y1は鹿児島営業所の上級機関である九州地方自動車部の指示により、勤務時間中のワッペン・腕章や国鉄労働組合の組合員バッジの着用を禁止していた。また、Y1は自動車部から、取り外し命令に従わない職員に対しては本来の業務から外すことも指示されていた。なお、Xは、管理者に準ずる地位である補助運行管理者に指定される一方、国労の組合員でもあった。  昭和60年7月23日、Xが本件バッジを着用したまま補助運行管理者として点呼執行業務に従事しようとしたため、Y1はバッジの取外しを命じたが、Xはこれに従わなかった。そこでY1はXを点呼執行業務から外して、鹿児島自動車営業所構内に降り積もった桜島の噴火による火山灰を除去する作業に従事すべき旨の業務命令を発し、その後も8月にかけて計10回にわたり同様の経緯から右業務命令を発した。降灰除去作業に際しては、Yら管理職がXの作業状況を監視し、また他の職員がXに清涼飲料水を渡そうとしたところ、Y1がこれを制止する等のことがあった。  そこで、Xが、本件業務命令は不法行為にあたるとしてY1・Y2に対し各自50万円の損害賠償を請求したもの」である。
 これは、旧国鉄鹿児島自動車営業所事件であるが、最高裁(最判H5,6,11)は次のように判示した。
 前記の事実関係によると、降灰除去作業は、鹿児島営業所の職場環境を整備して、労務の円滑化、効率化を図るために必要な作業であり、また、その作業内容、作業方法等からしても、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるものともいえず、これがXの労働契約上の義務の範囲内に含まれるものであることは、原判決も判示するとおりである。しかも、本件各業務命令は、Xが、Y1の取外し命令を無視して、本件バッジを着用したまま点呼執行業務に就くという違反行為を行おうとしたことから、自動車部からの指示に従ってXをその本来の業務から外すこととし、職場規律維持の上で支障が少ないものと考えられる屋外作業である降灰除去作業に従事させることとしたものであり、職場管理上やむを得ない措置ということができ、これが殊更にXに対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない。なお、Yら管理職がXによる作業の状況を監視し、勤務中の他の職員がXに清涼飲料水を渡そうとするのを制止した等の行為も、その管理職としての職責等からして、特に違法あるいは不当視すべきものとも考えられない。そうすると、本件各業務命令を違法なものとすることは、到底困難なものといわなければならない。
 本判決は、降灰除去作業はXの労働契約上の義務に含まれるとし、また、業務命令も違法ではないとしたものです。
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