事案は、「Xは、Y会社(通信社)に勤務する記者であるが、昭和55年8月20日から9月20日まで休日等を含め約1ヶ月という長期かつ連続した期間につき、始期と終期を特定して年次有給休暇の時季指定をした。Xの上司である社会部長は、前半約2週間の休暇は認めるが、後半約2週間に属する勤務日については、事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権っを行使した。  Xはこれを無視し、原子力発電問題の取材等の目的で約1ヶ月間の欧州旅行に出発し、その間の勤務に就かなかった。Y会社は、時季変更権が行使された勤務日10日間について、業務命令に反して就業しなかったとの理由でXを譴責処分に処し、年末の賞与についてもこの欠勤を理由に約5万円を減じて支給した。  そこで、Xは、本件処分の無効確認と、賞与の一部不支給及び本件譴責処分がXに対する不法行為であるとして損害賠償の支払いを求めたもの」である。
 これは、時事通信社事件であるが、最高裁(最判H4,6,23)は次のように判示した。
1 労働者が、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を経ることなく、始期と終期を特定して長期かつ連続の時季指定をした場合には、時季変更権の行使において、「右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断が認められる。」  右判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法39条の趣旨に沿う、合理的のものであることを要し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理なものであってはならない。
2 記者クラブに単独配置されている通信社の社会部記者が、使用者との事前の調整を経ることなく、始期と終期を特定して休日等を含め約1ヶ月の長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し、使用者が右時季指定の後半部分について時季変更権を行使した場合において、当時社会部内において専門的知識を要する右記者の担当職務を支障なく代替し得る記者を長期に確保することが困難であり、また右単独配置は企業運営上のやむを得ない理由によるものであったなど判示の事情があるときは、右時季変更権の行使は適法である。
 長期の時季指定に対する時季変更権の裁量的判断の合理性は、なお不明確なように思われます。
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