事案は、「X社は、昭和53年7月8日、A労働組合と同年度の賃金改定に関する協定書に調印した。その後Xは、既に終えていた査定に基づき、4月に遡って差額を支給した。このことにつきAは、Xの右査定による基本給及び役職手当の支給上、組合員12名と非組合員との間に格差があり、この格差は組合員であることを理由とするものであるとして、昭和54年7月17日青森地労委Yに救済を申し立てた。 次いで、昭和54年7月15日、昭和54年度の賃金改定についての協定書に調印がなされ、4月に遡及して差額が支給された。このことについてAは、基本給及び職責手当において、組合員と非組合員との間に差別があるとし、昭和55年7月22日、是正を求めてYに救済を申し立てた。 さらに、Aは、昭和55年度の賃金改定に関しても、昭和55年10月2日、Yに対して同様の救済申し立てをした。  これらの救済申立に対してYは、第一事件と第二事件ともに、Aの主張をほぼ認め、救済命令を発した。Xは右二つの命令に対し、本件各救済申立は申立期間経過後に行われたこと、ほかを主張し、救済命令は違法であるとして取消訴訟に及んだもの」である。
*不当労働行為の労働委員会への救済申立は、行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年以内に行わなければならない(労組法27条2項)。
 これは、紅屋商事事件であるが、最高裁(最判H3,6,4)は次のように判示した。
 Xが毎年行っている昇給に関する考課査定は、その従業員の向後1年間における毎月の賃金額の基準となる評定値を定めるものであるところ、右のような考課査定において使用者が労働組合の組合員について組合員であることを理由として他の従業員より低く査定した場合、その賃金上の差別的取扱いの意図は、賃金の支払によって具体的に実現されるのであって、右査定とこれに基づく毎月の賃金の支払とは一体として一個の不当労働行為をなすものとみるべきである。そうすると、右査定に基づく賃金が支払われている限り不当労働行為は継続することになるから、右査定に基づく賃金上の差別的取扱いの是正を求める救済の申立てが右査定に基づく賃金の最後の支払の時から1年以内にされたときは、右救済の申立は、労働組合法27条2項の定める期間内にされたものとして適法というべきである。
 査定と賃金支払とを一体のものとしてとらえ、査定に基づく賃金の最後の支払の時が「継続する行為」の終期だとしている点に注意が必要です。
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