10月22日に行われた衆議院議員選挙は自公が313議席、希望が50議席に後退、立憲が55議席を占めた。この結果を、マスメディアは、自公圧勝で全議席465の3分の2=310議席の3分の2を超すと報道している。
だが事実は、自民が284で現状維持(うち1議席は立憲が東海の比例名簿に名前を掲載しなかったミスのために棚ボタで獲得)、公明は29議席で5議席も後退している。決して与党が勝った勝ったと浮かれるような結果ではなかった。それもあってか、安倍首相の顔は終始、勝利にもかかわらず浮かない顔だったと言われる。
もう一つ、マスメディアの誤報は、希望が小池代表の「(改憲、安保法制に賛成しないものは)排除する」という発言によって、失速したと報じられていることである。果たしてそうか。
慶応大学の小熊英二教授の分析では、公明が政権与党となったここ20年の選挙結果では、自公3割、リベラル2割、無党派層5割の勢力図で推移しているという。この勢力図は、2009年の民主党が政権与党となった選挙、2012年の自民党が政権復帰した選挙、今年7月の東京都議会議員選挙でも当然に当てはまるという。
今年7月の東京都議会議員選挙では、自民党候補が惨敗した。だがこれは小池氏の政策が支持されたというよりも、安倍のもり、かけ問題をはじめとする横暴な政治に対する批判票であったので、決して小池氏に対する政策の支持票ではなかった。それを小池氏、前原氏は勘違いしたのではないか。また公明票が小池与党に回ったことも大きい。与党に回るのと野党に回るのとでは、その差は行って来いで、公明支持票の2倍になる。
それを、小池氏、前原氏はあたかも小池支持票であるかのように錯覚したのではないか。小池氏はここで希望が勝って、その勝利を引っ提げて、安倍首相に迫ろうとしたのであろうが、先の小熊氏がはっきりと指摘しているように、保守2大政党論は幻想であるということである。そのことは先の勢力図に照らし合わせればはっきりとしている。また前原氏は、何かとうるさい民進党内のリベラル派を、この機会に整理するいいチャンスだと読んだかもしれない。だが国民の中には2割の固定リベラル層が存在している。これを切り捨ててよいとする政党の支持はえられないだろう。唯一戦前の大政翼賛会のように、戦争を翼賛する組織を作って、反対するものは徹底的に弾圧するしかない(2割も反対する勢力がいたら戦争などはできない)。だがこれは、日本が戦争に向かって突進する時にのみ、初めて可能なやり方である。小池氏の唱える「改憲、安保法制イエス」という政党は、紛れもない保守政党である。平時では、リベラル系議員を淘汰することによって、それを支持する国民自体の意識を変えよう、あるいはできると考えたとしたら、極めて傲慢な、思い上がったやり方である。「排除」という言葉だけの問題ではない。こうした発想によって、今回の選挙では惨めに敗北したと言っても過言ではない。
この総選挙のあと、麻生副首相は「勝ったのは北朝鮮のおかげ」などと発言したという。だが北朝鮮危機を煽るなどは、とんでもない話である。危機を煽っているうちに、煽動が本当の戦争の危機をを作り出すということが往々にして存在する。
8月29日にはJアラートが発信され、市役所のフロアに、数十人の学童が、頭を抱えてうつ伏せになったという。この画像を見て、腰が抜けるほど驚いた。このミサイルが通常兵器だったら、何も大騒ぎをする必要はない。また万が一核兵器だったら(何等の前兆もなしにそれが起こることは有り得ないが)、その後頑丈な建物や地下に避難したとしても、後の祭りでもう間に合わない。広島・長崎を何百倍かする惨禍に見舞われてしまうのだ。
頭を抱えてうつ伏せになる、地下に潜る、頑丈な建物に避難するという避難方法を聞いて、つい第二次大戦中の竹槍訓練を思い出した。太平洋戦争敗北間際、学校の校庭では、戦地に行かないで残っている主婦の竹槍訓練が盛んにおこなわれた。米軍が本土に上陸してきたら、これら主婦が竹槍を繰り出して米軍と戦うのだという。これら主婦が重武装の米軍とまともに戦える道理がない。みな射殺体として米軍に差し出す以外にはなかったのだ。こういうのを「竹槍精神」だと、かつて盛んに言われたことがあった。
「地下か頑丈な建物に避難しろ」などは、万が一核兵器だった場合、この竹槍で米軍に立ち向かうのとさほど違わない悲劇となる。
 今回、安倍首相や菅官房長官は「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と繰り返した。だが北との国境線が約60キロしかないソウルでは、別に何かの避難をしたとは聞こえてきていない。韓国が何らかの措置もとっていないのに、大騒ぎすぎることは、むしろ金成恩の思うつぼだろう。