最近の日中関係には、これまでの対立とは異なる構造が現れていて、大変に危惧される。隣国と、しかも最大の貿易相手国と対立・抗争していても得るところは何もない。困った、困ったである。打開する道はないものだろうか。
 私の知人で、丁度2005年の緊張激化の時に訪中していた人がいる。その彼が言うには、「その頃、中国共産党の幹部や政府要人に会ったが、日本と中国では社会階層の思考方法が大分違う。日本では野田首相から大衆に至るまで、みな同じ様な思考方法を取るが(考えが同じという意味ではない。考えは、異なる2つの考えに大きくは2分される)、中国では、共産党の最高幹部、共産党員、政府関係者、労働者・農民、都市の貧民層などで、それぞれ階層ごとで違う思考方法をする(これもその階層内部では考えが同じという意味ではない)。従って、共産党の最高幹部や支配層が決断すれば、事態は収まるよ。そうもっていけばいいのだ」と言うのである(勿論このことで日本の方が民主主義が発達しているとはとても言えないが)。まあ当面そのことに期待するしかないのだろうか。
 そのように戸惑っているときに、なるほどと思わせるある見解を拝見した。ニッセイ基礎研究所の斎藤経済室長の見解で、日本の景気振興策について、「失速は海外経済の減速が原因であり、国内で対策を打っても無駄金に終わる可能性が大きい。効果の薄い経済対策で財政赤字が膨らんできた。財政出動より、対中関係の改善に努めた方が、企業や景気にはプラスに働くだろう」というのである。当面はこのような見解に同調していくしかなさそうである。