前回祭祀権について述べましたが、少し補足します。
 祭祀権は、旧民法に定められたもので、その第987条に「系譜、祭具及ヒ墳墓ノ所有権ハ家督相続ノ特権二属ス」とあり、家督相続者に祭祀権があると厳格に定めています。
 しかし、新民法では第897条に、
「系譜、祭具及び墳墓の所有権は……慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が継承する。
 2 ……慣習が明らかでないときは……家庭裁判所が定める」(…は省略部分)
 とされており、旧民法のように厳格ではありません。新憲法の下では、祭祀権は慣習を重んじ、法律はあまりかかわらないようにしたのです。したがって、祭祀権は、
 ①被相続人の指定があれば指定者。
 ②指定がなければ慣習。
 ③慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める。
 となります。
 被相続人の指定とは一般には遺言ですが、正式な遺言でなくても、お墓に建立者として名があるとかでもよいようです。相続人でなければならないということもありません。また、関係者の話し合いで決まればそれも一つの慣習ということのようです。法律が厳格でない分、争いになることも多いようで、最後は法律の出番で、家庭裁判所が決めるということになります。